「もち」
可もなく不可もなく普通のローカル映画でしたが、所々に見られる映像感性の良さが垣間見られる一本で、今回の中編ではなくエンドクレジットで使った映像をうまく使って普通の長さのドラマにしても描き切れる監督ではないかと思いました。監督は小松真弓。
主人公ユナの祖母の葬儀のシーンから映画は始まる。頑なに杵でつくことを主張する祖父の姿、それに続いて東北のこの地方に伝わるもちに関する様々がドキュメンタリータッチで描かれていく。
ユナが通う中学校はユナらの卒業を最後に廃校が決まっている。やがて夏祭り、建前などの情景が描かれ、ユナが密かに想いを寄せるタツ兄は卒業後東京に学校に行くと聞かされる。
卒業式の前の晩、もちにデコレーションをしているユナ。卒業式の日にタツ兄に告白とプレゼントとして渡すつもりをしている。もちにLOVEと書いたものの恥ずかしくなり上から隠してしまう。
卒業式の後、タツ兄を呼び出したユナは、何も話せずプレゼントだけ渡す。でも、自分にとっては大満足で、駆け抜けていく彼女のシーンで映画は終わる。
途中、おじいちゃんがユナの頭を撫でる場面や、紅葉を背景にした陸橋を走るユナの場面など、素敵なシーンも垣間見られる映画で、全くの凡作とは言えない面白さもある作品でした。
これは面白い。ここまでで最高の仕上がりの傑作です。エピソードの配分、原作のメッセージ、そして豪快なクライマックス、時代劇の様式美、全てが兼ね揃った素晴らしい映画でした。監督は内田吐夢。
吉岡清十郎を倒した武蔵は途上本阿弥光悦に出会う。そこに逗留している中、清十郎の弟伝七郎から果たし状が届く。そして蓮華院裏での果たし合いで伝七郎を倒した武蔵は吉岡一門を敵に回す。
吉岡一門は幼い源次郎を旗頭に最後の決戦を申し込んで、有名な一乗寺下り松の決戦がクライマックスとなる。このクライマックスの豪快そのもののカメラワーク、ここに至るまでにお通が武蔵の前に立つときの着物が風に舞うシーンの美しさ、この終盤の畳み掛けに圧倒されます。俯瞰で捉える下り松のショットから、田畑の中を逃げていく武蔵を追うカメラワークの大胆さに引き込まれる。やがて叡山に逃れたもののそこを追い出されて映画は終わります。
途中、吉野太夫との琵琶を例えにした、剛と柔の例え話など、原作の味もしっかり描かれ、クライマックスとの対比も見事にリズムを生み出しています。残念なのはまだ駆け出しだった高倉健扮する佐々木小次郎が弱いことでしょうか。いずれにせよ面白かった。
「宮本武蔵 巌流島の決斗」
いよいよ五部作最終章。正直、前作が抜群に面白いし完成度が高いので、見劣りしてしまいます。高倉健が表に出てくるというのがそもそも弱いのですが、原作は終盤が宗教色が前面に出てくるにで、娯楽時代劇として走ってきた流れでは一番難しいというものです。原作のエピソードを踏襲して、ラストシーンあっさりと締めくくった感じでした。監督は内田吐夢。
映画は、一乗寺の決闘の後比叡山を追われるところから始まり、原作通りのエピソードを進みながら、クライマックスの巌流島の決戦へと進んでいく。原作にある、無情さ、武蔵の人間的な成長、お杉婆らの心の変化を最後に盛り上げるところが、さすがに弱く、感慨にふけって終わるものの、第四部に見劣りしてしまった。でも五部作は見応え十分でした。