くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ストリート・オーケストラ」「めぐりあう日」

kurawan2016-08-23

「ストリート・オーケストラ」
宣伝文句ではいかにも感動ものという感じだったが、なんと、ラストシーンを見れば、その恐ろしいほどの悪意に寒気がしてしまう。ブラジルの現状がこれほどまでかと思ってしまうのですが、果たして私の解釈は正しいでしょうか?監督はセルジオ・マシャードです。

主人公で黒人のバイオリニストラエルチがオーディションを受けているシーンから映画が始まる。しかしいざ弾こうとすると手が震えて結局断念する。経済的にも困ってきた彼はスラム街の学校の教師の職を得る。しかし、どうしようもない生徒たちに困惑するラエルチ。

ある日、ギャングに絡まれて、そこでバイオリンを弾いたところ、感心され、それが噂になって生徒たちから信頼され始める。やがて次第に生徒たちの演奏も様になってくるのだが、リーダー的な存在のサムエルが友人とバイクに乗っていて、パトカーに追いかけられ射殺されてしまう。スラム街の黒人たちと警官の某づが起こる中、ラエルチに再度オーディションの話が舞い込む。

サムエル追悼の演奏が行われることになり、オーディションに合格したラエルチは一旦は指揮を断るも、気になり、追悼の演奏会で指揮棒を振る。

やがて、ラエルチはブラジル有数の楽団で演奏することとなり、それを見にスラム街の教え子たちがやってくるが、支払いをカードでというチケット購入シーン、その前に、カード詐欺はやめろちうサムエルの言葉がフラッシュバックする。一体、このカードは偽造ではないか?ラエルチの演奏をにこやかに見守る少年たちの姿でエンディングであるが、どこか不気味さが見える。

そう簡単に感動のドラマは今のブラジルでは起こり得ないのではないか?そんな寒気がラストシーンに見えるのだが、果たして、考えすぎだろうか?

映画の作りとしてはカメラの使い方、画面の切り替え、躍動感のある演出などなかなか見せてくれるので、ラストまで飽きることはないのだが、不気味に流れる背景がどうも気になる映画でした。


「めぐりあう日」
こういう映画を見る気分ではなかったというのもあるのでしょうが、なんとも鬱陶しい映画だった。主人公エリザの揺れ動く心の変化を映画いた心理ドラマなのですが、心理ドラマが画面全体を覆い尽くしている感じで、気持ちが晴れていかない。監督はウニー・ルコントです。

主人公エリザが列車に乗っているシーンから映画が始まる。自分の産んだ母親を探すためにパリにやってきた彼女は出生の秘密を探るために役所に出向く。しかし匿名出産を望んだ彼女の母親の意思があり、真相を話してくれない。夫のつれ後でもある息子のノエともどこかギクシャクする毎日を送るエリザは、理学療法士でもあり、たまたまやってきた患者のアネットに何か親近感を抱く。

アネットはノエの学校で働く女性で、どこか親密感を持つエリザは、もしかしたらという予感が走る。アネットはかつて女の子を産んだことがあるが、それは彼女を捨てた恋人の忘れ形見で、結局手放したのである。

見ている私たちにはこの二人が親子であることに気がつくのだが、あとは二人の心理ドラマが延々と続く。エリザと何かにつけ反抗するノエの存在。やり場のない苦しさから一夜の男を引き入れるエリザ、苦悩を重ねるアネット。この流れが重苦しくもあり、辛すぎるのである。

終盤、とうとう二人は親子であることを認識するが、それがどう解決になったかではなく、またエリザの心が晴れたわけでもないラストシーンもまた辛い。

静かに描かれる展開は、さすがに演出の才能を感じさせるのですが、どうにも入り込めない映画だった。