くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「怒り」「闇金ウシジマくんpart3」「真田十勇士」

kurawan2016-09-22

「怒り」
李相日監督作品ということになればかなりの期待度でしたが、本当にこれは傑作でした。とにかくすごいのは役者陣誰もがその最高の演技を見せていることです。だから、たまらなくどの場面も引き込まれてしまう。ストーリー展開のうまさ、流れのリズムの良さ、全てにおいて、期待以上に見事でした。傑作。

八王子で夫婦惨殺事件が起こる。その現場に刑事達が踏み込んだところから映画が始まる。凄惨な現場に、“怒”の文字が壁に血で書かれていた。

そして1年後、千葉、東京、沖縄に前歴不明の男が現れたという展開で本編が始まる。一方で八王子の事件の犯人は整形して逃げているのではないかという推測のもと、警察が捜査をしているという物語が並行する。

千葉で暮らす洋平の娘愛子は、風俗で働いていて、ようやく発見し自宅に連れ帰る。洋平の住む漁港では田代という若者が働いているが、謎が残されている。やがて、愛子は田代と親しくなり、一緒に住むようになる。

沖縄に母親とその男と一緒に来た泉は地元の青年に無人島に連れて行ってもらうが、そこで田中という男と出会う。彼はその無人島で住んでいるが、その飾らない人柄に泉もそして辰哉も田中に惹かれてく。しかし、ある夜、沖縄本島で飲んだ泉達はその帰り道、一人になった泉は公園で米兵にレイプされる。しかも、その現場に辰哉もいたが助けられなかった。

東京で仕事をする優馬ホモセクシャルで、ある日直人という青年と知り合い、一緒に暮らし始める。優馬にはホスピスで暮らす母親がいるが、やがて直人もその母親の世話をするようになる。ある日、直人が女の子とお茶を飲んでいる現場を優馬が目撃して詰め寄る。

それぞれの物語の中に、八王子の事件の犯人の整形後の特徴が公開され、それぞれの物語に疑いの芽が芽生えていく。そして、愛子とその父洋平も田代が犯人ではないかと思い、愛子は信じている一方で警察に連絡してしまう。

優馬も疑いの芽を直人に向けてしまい、行方不明になってから警察からかかってきた電話に、直人のことを知らないと答えてしまう。

沖縄の田中は辰哉の旅館で働き始めるが、泉のことを何気なく相談されてから、狂ったようになり飛び出してしまう。

そんな時、八王子の犯人の山上を知る男が傷害で逮捕される。その中で明らかになっていく犯人の姿。

警察が指紋照合してみると田代は犯人ではないことが判明。さらに直人が話していた女の子はただ施設で一緒だっただけで、直人は心臓が悪く、公園で倒れていて、それを発見した警察が優馬に電話したのだと判明。沖縄の田中の暮らしていたところにやってきた辰哉はそこの壁に“怒”の文字を発見、しかも、泉の事件も見ていて、それをあざ笑うような言葉が壁に書かれているのを見て、優馬をハサミで刺し殺してしまう。

犯人は田中だった。しかしその背後に、あらぬ疑念から、信じていた人物を遠ざけてしまった後の二つのエピソードに涙が止まらなくなってしまいました。しかも、それぞれの役者の演技が半端ではないし、演出もカット編集も素晴らしいので、画面から目を離せない。特に、宮崎あおいが素晴らしいので。彼女の真骨頂を久しぶりに見た気がしました。しかも脇役に至るまで、芸達者を揃えているから、映画全体が全く隙がないのです。

愛子は田代を迎えに行き帰る汽車の中で洋平に電話する場面でこのエピソードは閉じられる。優馬も真相を知ってから自分の不甲斐なさに涙をこぼす。泉は田中が暮らしていた島を訪れ、その壁の言葉を発見し、浜辺で叫ぶ。

人間の心の弱さをまざまざと見せる全体の展開の凄さ、それを見事に演じた役者達の演技に圧倒される一本でした。下半期のベストワンですね。見事でした。


闇金ウシジマくん part3」
毎回だが、痛快で面白いから、2時間を超えても飽きず見ることができる。監督は山口雅俊

今回はウシジマくんは表立って活躍しない。ネットビジネスで荒稼ぎする天生塾の塾長の話を中心に、この男に関わった若者や顧客、その知り合い達がその地獄の中に落ちていく姿で前半が始まり、途中から、ネットビジネスのコツをつかんだ若者の暴走に続く。背後に闇金の金の取立てなどは挿入されるものの、それほど表になる話に登場しない。

とにかく、金で身を持ち崩すというこの手の話の典型的な展開のままにラストまで行ってしまうのだが、気楽に楽しめるからいい。ただ、前半に登場するキャラクターが後半に生きてこないし、脚本の荒さは目立つ。

結局10月に公開されるらしいファイナルに続く前哨戦的な作品でした。まぁ、楽しかったからいいとしましょう。


真田十勇士
娯楽大作という典型的な映画でした。飽きもせず最後まで見れますが、と言って中身があるわけではない。堤幸彦監督なので、もう少し見応えのある場面や展開もあるのかと思いましたが、お金を使い切れなかったという感じです。最大のミスは大竹しのぶ淀殿でしょうか。この作品の場合、ほとんど飾りに近いのですから、もう少し美形女優を入れるべきだった気がする。華になるのが大島優子だけというのではものたりません。しかも男優陣もいかにも迫力がなさすぎて線が細い。もちろん中村勘九郎や松阪桃李など芸ができないわけではないのですが、演出のせいか脚本のせいか、非常に存在感が薄いのです。しかも肝心の真田幸村加藤雅也に迫力が中途半端すぎて、実は腰抜けだったというギャップが見えない。まあ、凡作の典型でした。

映画は歴史の史実を中心に展開するので、今更です。

アニメーションで猿飛佐助が真田幸村に出会う場面から描かれる。実は凡人だったという真田幸村の紹介から、九人の勇者が集まり、最後に一人現れて十人になって本編。

あとは、攻めてくる徳川家康を迎え撃つ大坂冬の陣からクライマックスの夏の陣へ展開して行きますが、戦のシーンにびっくりするような知略が描かれる訳でもなく、と言って今更群衆シーンもCGなので、平凡だし、とにかく合戦が絵になっていないし、スローモーションと手持ちカメラを駆使しているのに迫力がない。

結局、夏の陣の後、猿飛佐助らの作戦で、幸村ら以外は全員生きていて、淀殿は炎で死んでいくものの、外国にわたってエンディング。エピローグで彼らは外国で活躍し、天草四郎になって戻ってくる云々と続いてクレジットは幕を閉じる。

二時間を超える映画ですが、まぁ、飽きなかったから娯楽映画としてはそれなりに成功でしょうね。でも、手放しするほど面白くはない一本という感じでした。