「静かなふたり」
題名そのままに静かな映画だった。淡々と物語らしきものは進むのだが、ほとんどが古本屋の部屋の中が舞台なので、さらに静かで、会話の展開も静か。ラブストーリーのようだが感情の起伏は伝わってこないので、よくわからないというのが正直な感想です。監督はエリーズ・ジラール。
主人公マヴィがカフェで本を読んでいるシーンから映画が始まる。そこに一人の初老のジョルジュがいて、何やら店の主人と話して出て行く。彼は古本屋を経営していて、手伝ってくれる代わりに部屋を貸すという張り紙をして帰った。
マヴィはそれを見て早速ジョルジュの店を訪ね、その場で採用になる。しかし、ジュルジュには何か裏に隠されたものがあるようだった。
やがてジョルジュとマヴィは自然と惹かれ合うようになるのだが、その辺りの心のうねりがほとんど見えないので、やや推測の感じで理解して行く。
カットの切り返しを円形でフェードしていったり、赤い花を画面の配置に使ったりとなかなか映像にもこだわりがあるのですが、いかんせん、ストーリーが見えてこない。
時折ジュルジュは何処かへ出かけ、ひょこっと帰ってくる。怪しい男たちが訪ねてきてジョルジュの行き先を聞いたりする。
不思議な空気感で進む物語はやがてジュルジュが消え去り、マヴィが一人になって映画が終わる。なんとも感想の書きづらい一本だった。
「密偵」
諜報術策戦がとにかく面白いのですが、いかんせん、名前が錯綜してしまい、さらに韓国名についていけず、主人公のイ・ジョンチュルとキム・ウジンだけがわかりやすく、ほかの密偵として入り込んだ裏切り者の名前が訳がわからなくなって、今一歩入りきらなかった。しかし、ここまで作り込んであれば、韓国ではヒットしたであろうことは納得です。しかも、映画としての絵作りもしっかりとなされているので、作品としてもそれなりのレベルでした。残念なのが、アクションシーンが今ひとつ華麗さに欠けることでしょうか。監督はキム・ジウンです。
1920年代朝鮮半島、日本警察として所属するイ・ジョンチュルはある時、義烈団のリーダーであるキム・ウジンの謀略の食い止めと義烈団団長のチョン・チェサン確保の命令を受ける。そして相棒に日本人の橋本が彼につく。
しかしチョンは、何かにつけ巧みに朝鮮人を守ってきたイ・ジョンチュルを義烈団に引き込むべくキムを使って接近してくる。キム・ウジンをリーダーとする行動隊は
京城に爆弾を持ち込み、主要施設の爆破を企てていたのである。
イ・ジョンチュルはキム・ウジンと友人関係になり、立場を利用してキムたちを巧みに京城入りさせようとするのだが、キムの一味の中にも日本警察の密偵が潜んでいて
情報が筒抜けになる。なんとか京城に入ったものの、大半の仲間が捕まり、キムも窮地に追い込まれるが、イ・ジョンチュルの助けもあり身を潜めて機会を待つ。
しかし日本警察の上司の東は、イ・ジョンチュルの動きも巧みに利用し、ついにキムを捕まえる。しかし、キムは捕まる寸前にイ・ジョンチュルに策を預け、爆弾を守り、やがて日本人のパーティの席で爆弾を爆破。そして残る半分の爆弾は朝鮮総督府爆破のために運ばれて行く。映画は爆破音のみでエンディングとなる。
騙し合いの諜報策略の錯綜の中で展開するドラマがとにかく見応えのある一本で。京城入りまでのスリリングなシーンから、爆破までのクライマックスまでなかなか良く練られた脚本になっています。娯楽映画としてちょっとした佳作でした。