くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「V.I.P.修羅の獣たち」「オンネリとアンネリのおうち」「モ

kurawan2018-06-19

「V.I.P.修羅の獣たち」
予想した通り、無茶苦茶に展開する韓国映画らしいスタイルのクライムアクション。これが韓国の色だと見れば個性というべき、そしてファンを獲得してしかるべき色合いの作品でした。その意味では面白かった。監督はポク・フンジョン

1人の男パクがポールというCIAのアメリカ人と会っている。そしてある建物の中に潜入し、次々と手下らしい男を撃ち殺していく。そして物語は五年前、北朝鮮、1人の少女が道を歩いていて、いかにも怪しいキムという男との仲間が乗った車に拉致される。

場面が変わり、惨殺死体の現場、北朝鮮の捜査官リらが踏み込み、その惨状を目の当たりに、そして浮かんで来た犯人キムは国家の権力者の息子であることから、うやむやにされてしまう。

そして3年前、韓国で起こる連続婦女暴行殺人、それを追うチェ刑事、しかし国家情報院のパクらの妨害で操作が思うように進まない。チェは、北朝鮮の要人の息子で南に亡命して来た男キムが犯人と断定する。キムは、父が権力の座を降ろされる直前に南に亡命、父の隠し口座の情報を持っていた。そしてCIAがその情報を望んでいた。

国家情報院のパクらはキムをCIAに引き渡す画策をしていた。こうして国家情報院と警察の攻防の末、最後の最後、とうとうキムはCIAへ。その際キムはチェに銃弾を浴びせる。これまで上層部に従って来たパクも許せず、CIAとキムを追う。

ところがキムを追って来た北の諜報員リが立ちはだかり奪取する。そして北へ連れ帰ろうと船に乗せたが、権力を取り戻したキムの父の力で、リは船上でキムに撃ち殺されてしまう。

現代の香港、キムを手に入れようとするポールを尻目に、パクは単独建物に乗り込み、キムを撃ち殺し首を切ってポールの前に置く。そしてエンディング。ようやくサイコ殺人者キムは死ぬのだが、このやたらの物語の引っ張りが韓国映画であるなと思う。

荒っぽい脚本だがこういう展開が癖になる人もいるのだろう。これはこれで楽しめる作品でした。


「オンネリとアンネリのおうち」
何とも適当な映画だった。こういうのを輸入して来た担当者の判断を疑うが、これはこれでノルウェーの凡作とはこういうものかという判断にもなった気がします。とにかく主演の2人が下手くそな上に全然可愛くないから最後まで入り込めなかった。監督はサーラ・カンテル。

子供のことに無関心な家の子供オンネリとやたら子沢山で誰がいるのか気がつかない無関心な家の子供アンネリは仲良しでいつも2人で遊んでいる。

たまたまお金を拾い、それで一軒の家を買うことになる。展開は童話なので何でもありで進むが、ここにアイスクリーム屋の青年が登場、オンネリたちの家の隣人が金持ちだと聞いて泥棒に入る。ところが、あっさり捕まり、あとはあれよあれよとハッピーエンド。

夢溢れる設定がふんだんにあるにもかかわらず全く生かされていないし、とにかく主演の2人がぽっちゃり小太りで魅力がない。普通の子供なら可愛いが映像の中に出すにはもっと個性的な可愛さが必要かと思う。

演出も適当だし、全く見る所のない映画でした。


「モーリス」(4Kデジタルリマスター版)
なるほど名作ですね。美しい画面作りとプラトニックと現実の狭間を実に繊細に描いた演出が素晴らしい。本来ゲイの映画は嫌いなのですが、これは純粋なラブストーリーです。監督はジェームズ・アイボリー

海岸の砂丘、彼方にタコが上がっていて画面右手から一団の人々がこちらに向かって歩いてくる。初等科を卒業するモーリスとその家族、そしてモーリスの先生である。先生はモーリスを呼び、これから成長する中でやがて女性との愛に目覚める様を砂浜にリアルに絵を描きながら説明する。この場面の映像がとにかく素晴らしい。全編に美しい構図やカメラが見られるがこのオープニングでこの映画のレベルがわかってしまう。

時が過ぎ、ケンブリッジに通うモーリスはふとしたきっかけで、クライヴという学友と知り合い、みるみる意気投合していく。しかし、クライヴにはかすかにモーリスに対する恋心があった。

時は20世紀初頭のイギリス、同性愛は犯罪として罰せられていたし、世間の視線も冷酷だった。モーリスたちの関係は同性愛に近かったが、決して体を交えるまでに行かずプラトニックな世界であった。しかし、自分がそういう姓癖であると知ったモーリスはどんどんクライヴにのめり込んでいく。そんなモーリスを押しとどめるように距離を置くクライヴ。

友情なのか恋なのか、この不安定な危うさが漂う中盤がこの映画の見どころでもある。やがて、モーリスは停学になり故郷へ帰り父のする株仲介の仕事に就く。クライヴは弁護士になるが、間も無く友人が同性愛で罰せられる事件に遭遇する。

やがて、クライヴは女性と結婚、選挙に向けて精力的に歩み始める。そんなクライヴの家を訪れたモーリスはそこで猟場管理人のケイブと知り合う。ケイブはまだまだ若かったが初めてモーリスを見た時から彼に惹かれ、ある夜、クライヴ夫婦が留守の時に無理やりモーリスの部屋に入って来て体を交える。

普通になるべく努力していたモーリスだが、結局贖うことができず、2人の心の絆はどんどん深まる。しかし、ケイブはアルゼンチンへ旅立つことになっていた。最初はモーリスも安堵したものの、ケイブはやはりモーリスを愛していて、とうとうアルゼンチンへ旅立たず、いつも愛をかわそうとしていたボート小屋でモーリスを待つ。

モーリスは、ケイブとの最後の夜に、アルゼンチンへ旅立たないなら自分は地位も金も捨てると告げていた。

ケイブが旅立たなかったことを知ったモーリスは、クライヴにことの全てを告白して別れを告げ、ケイブの元に向かう。そしてボート小屋で2人は出会い映画が終わる。

当然モーリスたちの未来は波乱に満ちているのだろうが、かつて出会った頃のモーリスを思い出しじっと窓の外を見つめるクライヴのカットが美しい。これが名匠と呼ばれる人の演出だなと思います。素晴らしい一本でした。