くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スター・トレック BEYOND」「われらが背きし者」

kurawan2016-10-21

スター・トレック BEYOND」
面白いのですが、この新シリーズの最初の一本目を見た時の感激するほどの面白さはなかった気がします。監督がJ・J・エイブラムスからジャスティン・リンに変わったせいなのかどうかわかりませんが、導入部が実に軽すぎるし、物語が雑な気がする。確かにクライマックスの壮大な破壊シーンは見せてくれますが、これは今時それほど珍しいものではない。全般に、このシリーズの一つの転機かもしれませんね。

助けを求めてきた異星人が遭難した場所にエンタープライズが向かってみると、ハエのように群がってくる敵の宇宙船に一気にエンタープライズ号は破壊され、乗組員たちは脱出し、惑星に避難する。いや、これあまりに弱すぎやろ。

その星には宇宙を、かつての戦いの世界に戻すべく兵器を操ろうとする異星人がいて、その企みを阻止するというのが内容なのだが、正直、よくわかっていないかもしれない。

物語が壮大になりすぎたのと、スペース・オペラの面白さとオリジナルシリーズにあったドラマ性の面白さの兼ね合いがずれてきているためかもしれません。

結局その危機を救っていくという展開が、ド派手なCGとアクションでクライマックスに向かうのですが、見せ場が散逸してしまって、ポイントが絞られていないために、ただ漫然とラストシーンになってしまうのはちょっと、映像に溺れてしまった感じです。

決して退屈しないのですが、いくら見事なCGも延々と見せられると慣れてしまうというのが典型的に現れた結果になりました。まぁ、娯楽映画なので、そう気負って感想を書く必要はないかもしれませんが、第1作は確かに面白かったので、何が変わったのかと思う次第です。


われらが背きし者
物語も面白いし、画面の色や構図も美しいのですが、あと一歩練りこまれた脚本になっていないのがちょっと残念な映画でした。監督はスザンナ・ホワイトです。

雪原に車が走っていて、和やかな家族らしい人が乗っている。検問にさしかかり車を止めると、いきなり撃たれ全員死亡、そして物語は本編へ。面白い導入部で、車道、彼方に広がる雪原などとにかく美しい。

大学教授のペリーと妻のゲイルはモロッコに休暇旅行に来ていた。二人はどこかよそよそしく倦怠期の風である。とある、バーで一人の恰幅の良いディマという男知り合う。ディマは彼を自分のパーティに誘うが、なんと彼はロシアンマフィアの大物だった。彼は自分が命を狙われているという危機感から、マネーローンダリングの証拠が入ったUSBをペリーに託し空港で、MI6に渡してほしいという。

軽い気持ちで請負い、空港でヘクターという男に渡したが、ヘクターはペリーに、今回の取引を手伝ってほしいと持ちかける。彼はその情報でかつての自分の家族を台無しにした男を貶めようとしていたのだ。

一方ディマは情報提供し、家族の安全を保障してもらい、亡命することを望んでいたのだ。こうして巻き込まれ型のサスペンスがスタートする。

ヘクターの上層部は、リストに隠されている口座番号がないと亡命は許可できないといい、ディマは安全にロンドンに渡れればすべて話すという。いつの間にかディマに肩入れするようになっていくペリーたちの描写が実に弱いが、とにかく、ディマが安全に脱出できるように寄り添うようになるペリー夫妻。

チャーター機で脱出しようとするが、入国拒否されているとわかり、車で一旦ヘクターの知り合いの小屋に潜むが、追っ手が迫ってくる。ディマに、まず一人でロンドンへ行き、続いて家族を呼ぶからというヘクターの上層部の指示を受け、ヘリコプターに乗り込むが、舞い上がった途端に爆破される。これはディマが自爆し、すべての情報は消えて家族への追っ手をかわすための狂言だった。

後日、ペリーはディマから預かった一丁の拳銃をヘクターに渡す。ヘクターがその撃鉄を操作すると、そこには口座番号と、関係した人物の名前が書かれていた。冒頭で、数字を覚える才能を見せるディマの描写がここに生きてくる。途中で、マネロンの金を送るときに、その口座番号を一瞬で覚えるカットなども挿入されていた。この辺りは実に上手いのです。

サスペンスの面白さは非常に整理されていてわかりやすいし面白いのですが、ただペリー夫婦の存在感がどうでもよくなる展開になっているのは、ちょっと、演出不足でしょうか?

作り方次第では、いやもうちょっと時間をかければ傑作になったかもしれない映画だと思います。退屈はしないけど、何か足りなかったという一本でした。