「瀧の白糸」(溝口健二監督版・最長版一部デジタル復元)
泉鏡花原作の映画化であるが、さすがに溝口健二監督作品、この後のリメイク作品と完全にクオリティが違う。しかも、ストーリーも原作通りにラストは。法廷で白糸は自殺し、全てを知った欣弥も思い出の橋の下で自殺してエンディング。これが正当な展開である。基本的な物語は、献身的な白糸と欣弥の恋物語ですが、フラッシュバックを多用して、過去の経緯を組み入れながらの演出は、見事なものである。
冒頭の白糸の笑みから、馬車の競争場面へのカットバック、そして本編へ進むにつれても、通常の時間の流れではなく、時間を前後させながら、ストーリーを紡いでいくし、構図も見事に決まっている。
そして、悲劇のラストに向かっていく切ないほどの物語は、原作の味を見事にスクリーンに転化したという感じで、もう、圧倒されるのです。
サイレント映画ですが、このクオリティに脱帽せざるをえません。見事でした。
「蘇ったフィルム短編集その1」
東京フィルムセンター所蔵の蘇ったフィルム特集としての上映企画。ここではアニメ作品が中心で、映画史的に価値のあるフィルムをリマスターしたり、修復したものを見ることができた。
どれも非常に短いのですが、テクニックを駆使したアニメーションがとっても美しい。
作品は「東京行進曲」「黒ニャゴ」「村祭」「國歌 君が代」「大きくなるよ」「茶目子の一日」「なまくら刀」「浦島太郎」「漫画 瘤取り」「漫画 二つの世界」「くもとちゅうりっぷ」「KUJIRAくじら」「YUUREISEN幽霊船」の13作品。
「蘇ったフィルム短編集その2」
こちらは、実写フィルム中心ですが、「紅葉狩」という歌舞伎十八番の舞台を収めた重要文化財の作品や、松本俊夫監督の「銀輪」というPRフィルムの傑作、個人映画作家のパイオニア荻野茂二作品も見ることができました。
「紅葉狩」は貴重な舞台フィルムで、ほんの4分の作品ですが、名優の舞台を垣間見ることができます。荻野茂二作品の中で抽象的な映像作品は、フィルムで作られたゆえの色合いがとっても綺麗なものでした。また、SFアニメのような作品もあり、見せてくれます。「銀輪」はファンタジックなストーリーを感じさせる作品ですが、一人の少年がうたた寝をして自転車の夢を見るという設定になっています。
見た作品は「紅葉狩」「街」「百年後の或る日」「RIVER」「PROPAGATE(開花)」「AN EXPRESSION(表現)」「RHYTHM」「水の幻想」「銀輪」の9作品