くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「おとなの事情」

kurawan2017-04-13

「おとなの事情」
なるほど、脚本賞を取っただけのことはある、面白い。舞台劇のような様相を帯びていますが、映画としての映像作りも意識した演出が目を引きます。監督はパオロ・ジェノヴェーゼ。

いく組みかの夫婦の姿を手短に紹介してタイトル。エヴァロッコ夫妻が、友人たちを夕食に招待するところから物語が始まります。幼馴染の盟友や夫婦、そして友人一人の合計7人。さりげない会話で盛り上がっていますが、一つのゲームが提案される。

それは、自分たちは非常に親しいから特に秘密もないだろうということで、携帯の着信をみんなの前で披露していこうというものだった。外は月食。この設定も特に意味もないのだがいいムードになっている。

冗談半分に始めたゲームだが、何気ないメールや着信さえも、勝手な憶測、推測の元に内容が膨らんでいく。自分の浮気相手からの毎晩の連絡を隠すために友人と携帯を交換したために、物語が動いていく。ホモセクシャルが疑われ、普段は偏見などないと言っていたのに、身近にそんな人がいたら露骨に罵倒してしまったり、必死で浮気を隠しているにもかかわらず、実はこのメンバーの中で相手がいたりと、見えないものが次第にスクリーンの中に蔓延っていく様が実に面白い。

結局、多少の秘密こそが生身の生き方なのだと、それなりに元の鞘に収まってそれぞれの家に帰っていくが、そこまでに張り巡らされた伏線が一つづつ意味をなしていく細かいカットで結ぶラストが見事。

それほど長い作品ではないけれど、コンパクトに組み立てられた人間模様の面白さが絶品の作品でした。