くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「今宵、212号室で」「サンダーロード」

「今宵、212号室で」マリヤ、リシャール、アズドルバル、イレーネ

映画が悪いのか体調が悪いのか眠くて眠てしかたなかった。シュールでファンタジック、幻想的という感じの一夜の物語ですが、物語が雑多に見える上に、ちょっと音楽のセンスが悪いのか、安っぽく感じる。ただ、映像は美しいし舞台劇のようなカメラワークも面白い作品でした。監督はクリストフ・オノレ

 

軽快な音楽から主人公マリヤが、カーテンの隙間から彼女の愛人アズドルバルが別の女といちゃつく様子を見ているカットへ。我慢できず飛び出したマリアだが彼女もまた一夜を共にしたばかりで半裸である。アズドルバルに捨て台詞を残して夫リシャールの元へ。

 

ところが、マリアのシャワー中にマリアの携帯の受信を見たリシャールは、マリアの浮気に気がつく。マリアに問い詰めるが、開き直ったように、あっけらかんとする態度を取るマリア。

 

マリアはリシャールの家を出て向かいにあるホテルの212号室に泊まることのする。ところが突然若き日のリシャールがマリアの前に現れる。訳もわからず体を合わせ、あるようなないような会話をするが次々とマリアの浮気相手が現れ、さらにかつてリシャールのピアノの先生で、リシャールおつき合っていたかもしれないイレーネまで現れる。

 

イレーネは、今のリシャールの部屋に行き、懐かしい話をしながら、二人の間に生まれるはずだった子供を連れてきたりする。そんな様子とマリアと若きリシャールの展開、さらに、リシャールに追い出された若きイレーネはマリアと一緒に浜辺に住む今のイレーネのところへ行ったりすり。

 

物語といえるかどうか、夢の中の世界のような柔軟なストーリーと映像、カメラも天井から部屋から部屋を飛び越えたり、リアル空間を無視する。全体が、夢幻の如く、流れて、やがて夜が明け、部屋を後にしたマリアは出てきたリシャールと出会う。今夜戻ってくるかというリシャールの問いに、用もないから戻りますと答えるマリア。さりげなく普通に戻った感じで終わる。このエンディングは洒落てるんですけど、どこか纏まり切れていない気がしました。

 

「サンダーロード」

こういうスタイルなのかもしれないが、長回しとセリフの多さで見せていく作品で、主人公ジムがどこか精神的な欠陥があるのは伺えるのですが、彼と娘クリスタルとの絆の部分は今ひとつ掴めないし、隣人で親友のネイトとの絆も見えきれないように感じてしまったのは私だけでしょうか。全体の流れはドラマティックな感動へと進むようですが、ちょっと迫るものはなかった。監督はジム・カミングス。

 

主人公ジムの母が亡くなり、その葬儀の場面で、ジムがスピーチする姿をカメラがゆっくりと延々と寄っていくショットから映画が始まる。修理したはずのラジカセが動かず、母が好きだったブルース・スプリングスティーンの曲がかけられず、仕方なく踊って表現するが、同席の人の失笑を感じてその場を去る。

 

ジムには愛娘クリスタルがいるが妻とは別居中で、交互にクリスタルと過ごすようになっていた。しかし妻は離婚を希望していた。ジムは警察官だが、仕事でもトラブル続きで、相棒で隣人の友人ネイトがジムを何とか支えていた。

 

やがて離婚調停の書類が届き、クリスタルを単独保護する申請をジムの妻が提出。裁判所で、ジムが葬儀で踊った動画が証拠提出され、精神不安定ということで、妻の申し出が認められてしまう。クリスタルは学校でも言葉が悪いと学校に呼び出されたりもする。

 

動画が証拠提出されたことに切れたジムは、その動画を撮ってくれたネイトにつかみかかり、それをきっかけにジムは警察署を辞めることになる。娘もとられ、絶望したジムは姉に挨拶をして車で出るが、途中で同僚の警官に止められる。緊急連絡が入ったということだったが、何とそれは妻の家からだった。駆けつけてみると、妻は麻薬の過剰摂取で死んでいて、クリスタルだけがいた。

 

クリスタルはジムに誘われるまま、ジムと暮らすことに同意し、ジムとクリスタルはバレエの舞台を観にいく。舞台にのめり込むクリスタルを見る事務のカットから映画は終わっていく。

 

ただ、ジムの妻が素行が悪いと追うのはあまり見えない。何かにつけて欠席したりするので普通ではないとは見えるものの、異常なくらい喋るジムの方が精神不安定に見える。それにクリスタルは母の方についているようにも見えるのに、あのラストがどうもこちらに訴えるものが感じられなかった。これは私だけの感じ方かもしれない。サンダンス映画祭グランプリというのを何となく納得する作品でした。