「きっと、いい日が待っている」
シリアスで暗い物語ですが、影絵のような美しい景色のカットをふんだんに取り入れ、しっかりとした映画的な構図も取りながら丁寧に描いて行くなかなかの力作という一本でした。監督はイェスパ・w・ネルスンという人です。
施設に向かう車に乗るエリックとエルマーの兄弟のシーンから映画が始まる。二人の母親は病気がちでろくに収入もなく、二人は泥棒などを繰り返して毎日を送っていた。その回想から車のシーンへ。美しいデンマークの景色がシルエットのように描かれていく。
施設についた二人だが、この施設は校長たちによる児童虐待が普通に行われており、さらに子供達同士のいじめも横行していた。しかも、国の検察官との関係もなぁなぁで全く表に出ていないのである。
弟のエルマーは足に障害があり、何かにつけ目をつけられるが、実は頭が良く、文章を読むのがうまいために新任の女教師ハマーショイに気に入られ楽な仕事に回る。しかし一方で幼児性癖のある教師の的にもされてしまう。
映画はそういったエピソードをつなぎながら、やがて母親の死から、エルマーの憧れる宇宙飛行士の物語、そしてアメリカによる月面着陸のニュースへと進んでいく。
やがて、永久許可証と呼ばれる、この施設を退所できる日が近づいたエリックはエルマーも一緒にと校長に申し出たものの、妙な理由で永久許可さえ反故にされ、反抗したエリックは校長の車を傷つけたために、リンチされ昏睡状態になる。
そんな兄を救うため、エルマーは、かつてこの施設にやって来た正義感のある検察官に助けを求めるべくコペンハーゲンに行く。しかし、たまたま不在だったために追い返され、切羽詰まったエルマーは自らの命と引き換えにエリックを助けようと校長の車を大破させ、戦いを挑むのである。そして、給水塔に登ったエルマーはそこからダイブする。そこへ、駆けつけた検察官がこの施設の不正を認識する。
エリックも間も無く意識が回復、エルマーも大した怪我ではなく、やがて二人は退院、施設に永久許可証をもらうべく立ち寄る。そこでは新しい検察官による取り調べが行われていた。
そして、それまで幽霊のように従順に従い、口を閉ざしていた子供達も、検察官に個別に話があると手をあげる。去って行くエリックたちの車のシーンでエンディング。映像作りもしっかりと取ったなかなかの秀作でしたが、ただ実話を基にしているとはいえやや重いです。
「関ヶ原」
歴史大作であり、ものすごい数の登場人物が存在し、しかも一瞬の出来事に凝縮されたドラマである。このことを踏まえた上での思い切った脚本構成を作った作品というイメージの一本でした。悪く言えば整理不足ですがよくいうとこういう一本の映像としてまとめた手腕が素晴らしいというべきかもしれません。原作が司馬遼太郎、脚本、監督は原田眞人です。
関ヶ原の合戦の前日、石田三成らが戦場となる地を回っている場面から映画が始まる。そして時は豊臣秀吉の晩年に移る。史実であるから、ご存知の人物が次々と登場し、ご存知のように丁々発止のドラマが展開し、なるべくして合戦ということになる。
あくまで物語を大河大作というイメージに焦点し、サスペンスフルな展開も人間ドラマ的な描き方もせず、どんどん関ヶ原の戦いという歴史の一大出来事になだれ込んで行く様を描いて行く。
ゆえにあえて、セリフの不明瞭さもそのまま、西軍東軍の色分けも混濁させ、ひとかたまりの群像劇のごとく演出したのだろう。そうみれば、なかなかの一本と言えるし、映画というものの作り方の一手段と見ることもできる。
2時間を超える大作にもかかわらず退屈しないのはその突っ走った描き方だろう。もちろん、クライマックスのカメラワークや絵作りのうまさリズムの作り方の妙味はなかなか楽しい。
それなりに楽しめたなかなかの映画だった気がします。