「裁き」
インド社会の姿を様々な視点から組み立てて行く姿は独特で面白いし、それが迫真の法廷劇となればその展開は興味津々。そのアイデアだけでも特筆の一本ですが、映画のリズムとしてはどうも合わなかった。監督はチャイタニヤ・タームハネーという人。
一人の老人で民謡詩人という肩書きの男性が街頭のステージで歌い始める。リズムに乗せて社会風刺のような内容を朗々と歌って行く。ところはこの老人が突然逮捕される。容疑はある下水道清掃人が自殺し、その自殺の原因がこの老人の歌だというのだ。
一見コミカルなオープニングだが、インドでは、適当な逮捕劇が横行しているという弁護士の言葉などが登場し、まずこの不思議な社会に放り込まれる。
裁判といっても、アメリカやヨーロッパ、日本の法廷のような理路整然としたものはなく、人が集まって判事や検事、弁護士が対峙するものの、どこかなぁなぁ感があります。
こうして本編である法廷劇が展開するのですが、やってくる証人や警察関係の人の供述も適当そのもので、これは笑いを取るためか、シリアスさを嘲笑するためかわからなくなってくる。
結局、明快な告訴理由も証拠も不十分で保釈となる。
そして、淡々と物語が終わったかに見えたが、次のシーンの法廷場面、被告はまた別容疑で呼び出されている。
映画の面白さとしてインドという国の姿を風刺風に描いたのだろうと思うけれど、やはり本当を知ってこそのこの作品の値打ちがわかるという感じの映画でした。
「リボルバー」
これは面白かった。原作を見事な群像劇にしてテンポ良い展開で次々とエピソードと登場人物が絡んでくる。こういう本は好きだし、リズミカルに見せる演出も大好きです。監督は藤田敏八、脚本は荒井晴彦です。
映画は競輪場に始まる。柄本明と尾美としのりが偶然出会い、なぜか二人が出会って運がつき始め次々と勝ち進んで行く。
ここに一人の警官がいる。本部長賞を取ったため上司から見合いを勧められ、その女性に一目惚れされて困っている。
高校生のカップルがいる。少年は受験勉強に熱心だが彼にいいよる女子高生。
スナックのホステス、彼女に関係を迫ってくるヤクザ風のバーテンが北海道から九州までやってくる。そして、公園で無理やり関係をし、それを高校生が偶然見て、リンチに会う。
会社の上司と部下の恋愛話がある。女は結婚するからと関係を切りたいと迫るが男は未練がましくつきまとう。
こうした人物が浜辺や、公園のベンチなどで絡み合いながら次第にクライマックスとなるすすきのの舞台へと向かって行くのが本筋です。
しつこい上司はたまたま公園でぼんやりしていた警官を殴り拳銃を奪う。そこから物語が動き始めるのです。
そのピストルをゴミ箱に捨てて、それを見ていた高校生が拾い、北海道から来たヤクザ風のバーテンに復讐するために北海道へ向かう。拳銃を取られた警官は辞職し、その少年を追って行く。好きな女にラベンダーを持ち帰るために北海道へ行く柄本と尾美。
そしてクライマックスはすすきのになるという展開は本当に楽しい。所々の、何気ないギャグの連続も小ネタで最高。
軽いタッチで全体が進むので、拳銃強奪事件という重いテーマがうまくオブラートに包まれる。こういうのが絶品の脚本というのでしょうね。本当に楽しめました。