くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「悪魔のような女」「おじいちゃん、死んじゃったって。」「

kurawan2017-11-06

悪魔のような女
サスペンスの王道のようなストーリーと畳み掛ける展開がさすがに職人技を感じさせる傑作。どんでん返しはだいたい途中でわかるにもかかわらず、さらに遊びでエンディングを閉める技のうまさはさすがである。監督はアンリ=ジョルジュ・クルーゾー

寄宿学校を経営する校長のミシェルだが、金目当てで結婚した妻クリスティナには冷たくあたり、愛人のニコルと目の前で平気でいちゃつく。

そんなミシェルにあいそをつかしていたクリスティナはニコルの入れ知恵でミシェルを殺す計画を立てる。ニコルの家でミシェルを眠らせ浴槽に沈めて殺し、学校のプールに沈めたのだが、なぜか死体が消えてしまう。

焦るクリスティナは警察などに行ったり、身元不明の水死体を見に行ったりする。やがて一人の老刑事が彼女に目をつける。一方、死んだはずのミシェルのスーツがクリーニングで届いたり、子供がミシェルを目撃したり不審な出来事が続き始める。

もともと心臓の弱かったクリスティナは体が弱っていく。そしてある夜、物音に目を覚ましたクリスティナは浴槽に沈んでいるミシェルを発見、そのミシェルが起き上がってきて、ショックで死んでしまう。それは全て最初からニコルの計画だった。

廃校になった学校の整理の中、少年がクリスティナにおもちゃを返してもらったと叫んでいるシーンでエンディング。クリスティナは死んでいないの?という遊びのラストがうまい。さすがに職人監督の力量という面白さでした。


おじいちゃん、死んじゃったって。
ちょっと、面白い映画だった。出だしのカメラワークから、今時の若者や家族の姿をデフォルメした描き方で映していく前半から、次第に、芯の通った人間ドラマへの展開がうまいので、いつの間にか引き込まれてしまう。ただ、主人公佳子の彼氏がやってきてからが少々くどい気がするのがちょっときになる映画でした。監督は森ガキ侑大

主人公佳子が彼氏とSEXしているシーンに映画が始まり、そこへおじいちゃんが死んだという電話が入る。そこで、散り散りになっている息子達や孫たちが集まってくるというのが本編。

今時の高校生やら引きこもりやら大学生やら、なぜか成功している女性やらリストラされた父やら何もかもがかなり極端な描き方でくるコミカルな前半はなかなか面白い。

しかし、葬儀が進むにつれて、それぞれが心の奥底にあった思い出を思い出し、さらに一本筋の通った一言などが飛び出してくると、途端に物語に深みが出てくる。

終盤の花火のシーンなどの映像表現も面白いし、佳子の彼氏が来て、みんなで集合写真をとる下りは、なんかほんのり感動させてくれます。

ラストはおばあちゃんを施設に送り出して行って、さらに佳子がインドに行って終わりますが、おそらく原作がいいのでしょう。散りばめられたエピソードの数々はなかなかのものです。それにカメラもドローンなどを使って縦横に動かすワーキングで面白いです。ちょっとした小品ながら楽しめました。


ポンチョに夜明けの風はらませて
評価が高いので見に行ったが、なんのことはない、自主映画の佳作というレベルの一本という感じだった。カメラが人間を映し出していない感じで、それが狙いなのだと言われればそうかもしれませんが、だからと言ってオリジナリティのある作風というわけでもない。監督は廣原暁。

国立大学の合格発表のシーンに映画が始まる。同級生二人が来るまで近づき、発表帰りの友達を乗せる。実は不合格だったと告白して、車が走り出してタイトル。このオープニングはちょっと面白いが、驚くほどではなかった。

あとはこの三人が父親の車で無邪気に走り回るロードムービースタイルの展開となる。実は一人の級友とバンドを組んで卒業式を乗っ取る計画なのだが、残る一人は一人練習をしている。

車の三人は、途中でアイドルらしい女や風俗嬢を乗せて走るのだが、それぞれのキャラクターが生き生きしてこないので、正直面白く展開していかないのだ。しかも、誰もが適当な演技なので余計につまらない。明らかに演出の怠慢という感じである。

とにかく自由奔放に走り回る青春群像のはずが、全然そうは見えないし、高校の卒業式をすっぽかして弾けている瑞々しさなんか微塵も見えない。

ラストは、卒業式で一人で演奏をして卒業式はめちゃくちゃになり、車の三人はどこかに突っ込んでしまって、彼方に走り去ってエンディング。

全体が絵になっていないのである。だから一つの映像として作ろうという意気込みは見えるがおそらく原作が全く映画に昇華していないのだと思う。そんな感じの一本だったが、この監督は次の作品に期待したいです。