くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スイス・アーミー・マン」「秀子の應援團長」「ナミヤ雑貨

kurawan2017-09-26

スイス・アーミー・マン
これはファンタジーなのかサバイバルなのかはたまた異常者の妄想なのか、なんともこういう感性の持ち主もあるのだなと感心してしまう一本でした。監督はダニエル・シャイナート

とある無人島、一人の男が首をつろうとしている。嵐で遭難して流れつき、孤独に蝕まれ耐えられなくなったという書き込みが様々なものに書かれ海に浮かんでいる。

ところがいざ首をつろうとすると波打ち際に男の体が流れ着く。てっきり生きていると近づいてみるがなんと死体だった。しかし、何やらガスのよなオナラが出ているので、不思議に思い見つめていると、海に浮かんでいる。これは逃げられると、死体にまたがりガスの勢いでボートのように沖に飛び出す。ところがしばらく行って転覆し気がつくとどこかの浜辺、どうやら陸地に着いたらしい。これがまずおかしいほどに早いのだが。

男の名前はハンク、彼は恩人の死体を運んで森をさまよい始めるが、なんと、死体から水が吹き出したり、ガス鉄砲が出たり、いつの間にか喋り始める。なんだこれは?という展開で、見ているこちらの頭がどうかなったかと思えてくる。

あとは二人が会話しながら森をさまよい、いつの間にか友情さえ芽生えてくる。しかもハンクが持っていた携帯の着信画面の女性で、ハンクが片思いの人妻に恋をしてしまう。

そしてなんとか森を抜け、たどり着いた庭は彼女の家の庭で、そこで助けを求めてもらうが、死体は安置所へ運ばれようとする。しかし耐えられないハンクは死体を抱きしめる。一方、人妻はなぜハンクの携帯に自分の写真があるのかと詰め寄り、警察はハンクを異常者として逮捕、死体は全てを見届けたように見の中へとオートのように流れ去っていく。呆れてみる人々のカットでエンディング。

死体が喋り出すあたりからもらうが普通の感覚で見れなくなってくる。しかも、妄想なのか現実なのか訳が分からず、どういう落とし所なのか、訳が分からないが、こういう映画もあるんだと感心してしまう作品でした


「秀子の應援團長」
ほのぼのとした古き良き日本映画。ただのんびりとスクリーンを見つめている夢の一瞬という映画でした。1940年、まだ日本が起こした戦争も苦境に立つこともなくゆったりとしていた時代感がくっきり出ていた。監督は千葉泰樹です。

叔父さんが監督をしている野球チームアトラスは、負けが続いている。そんなチームをなんとか立て直そうと主人公秀子と友達が応援歌を作り、選手の前で歌うと、なぜかチームが突然勝ち始める。

中心の物語の背後に鉄鋼産業育成を進める当時の世相なども絡み、たわいないものの、見ていて明るくなってしまう展開が続きます。

ブルジョワ家庭の主人公たちの裕福さも描写し、映画館におとづれた人々に夢を与えていく、そんな黄金時代の姿がまざまざと見れる楽しい映画でした。


「ナミヤ雑貨店の奇蹟」
東野圭吾の本は人間描写、心理描写がずば抜けているので、今まで映画になったもので大成功したものが思い当たらない。今回の作品は、原作の入り組んだ物語を実にうまく整理された脚本になっている。あともう少しキーになる役者に芸達者を配役すれば傑作になったように思えるのですが、それぞれが荷が重かったというのか、集まった役者同士のバランスが悪いような気がして仕方ないです。監督は廣木隆一ですが、役者を使い切れなかった感じです。山田涼介らも頑張ってるのですがね。

夜、大邸宅から飛び出してくる三人の若者、彼らは強盗に入ったらしく、用意した車が不調で動かないために、たまたま見つけていたナミヤ雑貨店に忍び込む。この店はすでに閉めてから30年以上たっているが、かつてここの主人は周りの人たちの悩み相談をしていて、夜中に相談事をシャッターから投げ込むと、横の牛乳箱にアドバイスの返事が入っていた。

ところが、突然一通の手紙が舞い込む。外を見ると誰もいない。慌てて三人は逃げるが、気がつくと元の場所に戻っている。三人は入れられた手紙の返事を書くことにする。それは、魚屋ミュージシャンと名乗る人物からだった。

時は1980年、一人の青年が葬儀のために郷里に戻ってくる。彼が手紙を入れた魚やミュージシャンで、3年続けた音楽をやめようかどうか悩んでいるという。

こうして、次々と泣かせる話が前後の時間を操りながら展開、ラストは三人の若者も取り込んでエンディングを迎える。

エピソードの組み立てと関連づけていく展開は非常に良くできていて見ていて混乱しないし、1つ1つにどんどん胸が熱くなってくる。そして、すべての話が1つにまとまるラストは最高に盛り上がってくるのですが、何かが物足りないのです。それが、役者の演技力といえばそれまでなのですが、もしかしたらアンバランスなのかもしれません。いい役者も揃ってるのに噛み合っていないのですね。あと一歩、ほんの少し、胸に訴えかけてくれればなぁと思ってしまう。そんな映画でした。