くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「花ひらく 眞知子より」「あさひなぐ」

kurawan2017-09-28

「花ひらく 眞知子より」
市川崑監督長編デビュー作。カメラアングルのあちこちや画面作りのあちこちに市川崑監督らしいこだわりが見え隠れするものの、物語自体は時代色をくっきりと表した、中途半端なメロドラマという一本でした。

ピアノコンサートの場面から映画が始まり、姉の策略で見合いの席に連れ出された主人公眞知子のシーンから物語が始まる。すでに24歳となり当時としてはギリギリの結婚年齢、裕福な上流階級とはいえ、それは過去の話で、今は経済的なことを考えないといけないにもかかわらず、古き亡霊に取り憑かれたような母に反抗する眞知子。

友達の米子はどちらかというと庶民派で、労働運動をしている関という男と付き合っている。しかし米子のアトリエで関と出会った眞知子は関に一目惚れしてしまう。

一方、真知子の次の見合い相手でもあった実直な男河井は会社経営者で、労働問題と経営状態の悪化に悩んでいるが、真面目に眞知子のことを考えている。

米子のアトリエの向かいが精神病院で、時折叫び声が聞こえてきたりと、かなり際物的な演出もされているが、一方でアトリエの奥の壁がシルエットで陰影が変わったりという凝った演出も施されている。

結局、眞知子は関と駆け落ちするつもりで身支度を進めるが、そこにやって来た米子は関との間に赤ちゃんができたと告げる。

眞知子は関に別れを告げに行き、そのまま今の自分の生活に別れを告げて家を出る。浜辺で海を見つめ、新しい時代に飛び込んだ眞知子の姿を美しいカットで描いてエンディングになる。

女性が自立をしていこうという空気がほのかに漂い始めた戦後初期の物語という空気感がくっきりと出ているし、時代が変わってくるという風の音が聞こえてくるような映画で、市川崑監督らしいすっきりとフルショットで捉える構図の美しさは見ていて本当に引き込まれます。出来栄え云々より、映画を楽しむ、そんな作品だった気がします。


あさひなぐ
とにかくテンポが良くて、オープニングからラストシーンまでポンポンと弾むように物語が展開する。決して出演者の演技が上手いわけでも、演出が優れているわけでもないのですが、リズミカルに一気に走り抜けるので見ていて気持ちがいい。映画作りの基本だけが出来上がったような楽しい映画だった。監督は英勉です。

主人公あさひが高校に入学し、薙刀部に入部するところから物語が始まり、例によってめちゃくちゃ上手い先輩やら、厳しい先生やらが登場、そしてライバルにこれまたものすごい強敵がいるといういつものパターンで展開していく。

流れは、特に変わったものもないし、登場人物の背景を丁寧に描こうなんて欲もなく、ただひたすら女子トークに近いノリで走り抜けていく。エンタメに徹した脚本と演出がかえって肩のこらないハイテンポな仕上がりになったという感じです。

映画っていうのは、まずこうでないといけないなと思える一本でした。