くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「水面のあかり」「リベリアの白い血」「女の座」

kurawan2017-10-05

「水面のあかり」
いわゆるインディーズのマイナー作品もたまに見るのもいいかと見にきて見たが、果たしてメジャーではないならもっと思い切ったことができないのかと思ってしまう。確かに技術はしっかりしているし、丁寧な演出がされている。勉強してきた監督だろうとは思うが、これではメジャーには出ないなと思ってしまう。監督は渡辺シン。

主人公のあかりは、毎日の生活に何か未来への進展が見えないで悩んでいる。そんなある日、取材先で退行催眠と呼ばれる、いわゆる過去、あるいは前世まで記憶を遡るという研究をしている松本教授に出会い、自ら催眠術にかけてもらう。

その中で、一人の女の姿を認めた彼女は、どうやらその女性は桃山時代に京都で亡くなったゆきという女性らしいと、その真実を見つけるために京都へ行く。

物語はそこで、かつて地震で亡くなったゆきと、現地で出会った学芸員の妻と娘が阪神大震災で亡くなったことが絡んでくるという展開になる。

物語はもっと面白く演出できる気がしますが、割と無難に仕上げているのが少し惜しいです。ただ、映画としてはしっかり作られていると思う。普通の作品といえばそれまでですが、ちゃんと資金を得て、しっかりした役者をもっと揃えればそれなりの作品が作れる監督だと思います。


リベリアの白い血」
シリアスな映像でリベリアの移民の姿そのままを捉えて行くドキュメンタリーのごとき作品で、主人公のシスコの生きる世界がスクリーンいっぱいに広がって行く様はなかなかの一本。ただ、暗いです。監督は日本人で福永壮志。

リベリアの貧しい村でゴム農園の仕事をする主人公シスコの姿から映画が始まる。こき使われ、苦しいだけの毎日に飽き飽きした農園の男たちはストを決行。しかも妻には誰もが内緒で、村はずれで集まりサッカーをする。しかしボスからの圧力がかかり、少しづつ皆が抜けて行く。

シスコにはアメリカで住んでいるいとこがいて、そのいとこを頼りに観光ビザでアメリカへ渡ったシスコはタクシー運転手をして働き始める。しかし、かつての内戦の戦友ジェイコブと再会し、昔をトラウマとして思い出し悩むシスコ。執拗に近づくジェイコブをいなしている時、ジェイコブは目の前で車に引かれてしまう。助けもせずその場を去るシスコ、そして車のパンクを修理し夜の街に走り去ってエンディング。

現実そのままをまっすぐに捉えるカメラがまるでドキュメンタリーのごとくで、その中に一人のリベリア人の姿を捉えて行く展開がなかなか見せてくれます。陰気な話ですが、映画としては成立していた感じですね。


「女の座」
何気ないホームドラマなのですが、結構楽しんでしまったし、面白かった。こういうレベルの脚本は書けそうで書けないですね。監督は成瀬巳喜男

東京で荒物屋を営む家で展開する何気ないホームドラマ。当時ではめづらしくない子沢山で、年頃の娘だけでなく、長男の嫁で、未亡人となった女性もいる。この家の当主が庭石を持ち上げようとしてひっくり返り、床に伏したのをきっかけに、外に出ていた娘たち夫婦も一斉に呼び出して集まるところから映画が始まる。

どの夫婦も一癖ありそうな風な上に、嫁入り前の娘たちもそれぞれに思惑が入り乱れている。そこに、長い間あっていなかった祖母の息子が立派になってやってきたかと思えば、実は彼も曲者だったり、長女の嫁ぎ先の夫は三ヶ月ぶりに女にふられて帰ってきたり、次々とサスペンスフルな展開を繰り返して行く。

時は東京オリンピック前、さりげない時代風俗も取り入れ、古き日本の家庭の物語の展開は、たわいないにもかかわらず、どこか面白い。役者陣はオールスターという配役もまた豪華で、当時はこういう映画が山のようにあったのだろうと考えると、やはり映画黄金期は良かったなぁと感慨深く感じてしまいました。