くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「光」「泥棒役者」

kurawan2017-12-01

「光」(大森立嗣監督版)
とにかくしつこいほどの演出にため息が出てしまう。しかも、感情の動きの演出ができていないのか、演技としてできていないのか、ちぐはぐで、物語にしっくりと入っていけない。その行き違いが最後まで引っかかる映画だった。監督は大森立嗣。

信之と輔は小さな島で暮らす。解説では同じ性なので兄弟かと思ったが、多分違うのだろう。いつも輔は信之を慕っていた。信之はある時、美花に誘われて森に行くと、美花は男に犯されていた。どう見ても無理やりに見えなかったが、美花が「助けて」というう呟きにその男を信之は殺してしまう。しばらくして、地震津波が島を襲い、ほとんどが死んでしまうが、信之たちは高台にいたので助かる。

それから25年。信之は役所勤めをし、結婚し、一人娘もできている。実は信之の妻はおとなになった輔と不倫している。この構図も今ひとつわからないし、そもそも、少年時代の信之の殺人も今ひとつ、信憑性がない。

そんな時、父親が輔を訪ねてきて、昔殺人を犯した証拠を持っているといい、酒浸りのまま居座る。

美花はいまでは女優として活躍していて、美花に輔は、父が持ってきた証拠の写真を送って脅す。美花は信之に助けを求めてくる。信之は妻と輔の不倫も知っていて、そんな時、信之の一人娘が変質者に襲われる事件なども起こる。

信之は美花を助けるために輔に会い、父親を殺す代わりに美花を脅迫することをやめさせようとするが、この辺りの心理変化も全く見えないので、かなりうそくさく、わざとらしく見えてしまう。

結局、父親は死んでしまうのだが、それは飲み過ぎと睡眠薬のせいなのかどうかその辺りも曖昧のまま。

何もかもが、うまく噛み合っていないままに、輔も信之に殺され、信之も美花の元を離れ、自宅に戻ってきて、子供と戯れて映画が終わる。なんとも、噛み合わない映画というのも珍しい。時折挟み込まれる仰々しい音楽効果も監督の独りよがりに見えてしまう。凡作というより、珍作という感じの出来栄えの映画だった。


泥棒役者
これは面白かった。おそらく原作の舞台劇がしっかりできているのだろう。ただ、あくまで舞台のテンポで流れて行くのがちょっと残念で、本来映像にするにあたりカメラワークや編集で作るべき映像のリズムが作られていないのがもったいない。役者の演技力もほんのわずかにずれた掛け合いなのも悔しい。でも楽しかった。監督は西田征史

主人公のはじめは可愛い彼女と同棲していて、そのラブラブシーンから映画が始まる。彼女の誕生日にデートしようということになって、はじめが待っていると、かつての仲間で泥棒の畠山に捕まり、今から泥棒に入るから鍵開けの名人のはじめも付いて来いという。

こうして強引に連れていかれたはじめは、前園とい絵本作家の家に忍び込む。ところが次々と珍客が現れ、また留守と思っていた前園も現れ、苦肉の策で、はじめは編集者になったり前園になったりしながら急場をしのぎ始める。

如何にもな舞台劇導入部だが、このあと、誤解が誤解を勘違いが勘違いを生んで行く独特の舞台劇のテンポが今ひとつずれている。無駄ななカメラワークというより編集のテンポが良くないのです。それでも脚本の面白さに引き込まれどんどん展開して行く。

あとはあれよあれよと物語が盛り上がりリズミカルになって行くが、残念ながらラストの畳み掛けが乗り切れずエンディングしたのが残念。さらにその部分を補うかのようなしつこいエピローグも今ひとつカバーになっていない。

でも全体にとにかく楽しい。こういう舞台劇なら作って見たい気がする。そんな作品でした。