くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「夜叉」「関東おんな悪名」

kurawan2017-12-08

「夜叉」
決して好みの映画ではないけれど、降旗康男監督の見事な演出がきらきらひかる秀作でした。主演の高倉健の映画というより、田中裕子といしだあゆみの2人の女の物語だと思います。

大阪南で人斬り夜叉と呼ばれていた修治は冬子と出会ったことでヤクザから足を洗い、漁師として裏日本の漁村にやってきて15年が経っていた。そこに、南から一人の女蛍子がやってくるところから物語が始まる。

蛍にはどうしようもない情夫矢島がやってきて、不穏な空気がこの村に起こり始める。

矢島は覚醒剤を持ち込み村の男たちに取り入っていくが、蛍子は修治のいいつけで矢島が手に入れた覚醒剤を捨ててしまう。

金が払えなくなった矢島は村から逃げ、一方、その時の騒ぎで修治がヤクザ者だとばれてしまう。そしてこれがきっかけで螢子もまた修治に惚れてしまう。

螢子の店で飲んでいる修治のところにやってきた冬子が、さりげないおちょこの酒のつぎあいで女の闘争心を見せる下りの演出が素晴らしい。

組に拉致された矢島を救い出してほしいと螢子に頼まれ、修治は大阪に行くが、結局矢島は殺され漁村に帰ってくる。蛍子は修治に礼を言い、村を離れる列車に乗るが、列車内でつわりになり、修治との子供を妊娠したことを知る。

一方、無事帰ってきた修治を迎える冬子。女のドラマで終焉を迎えるこのクライマックスはとにかく降旗康男監督の真骨頂と言えます。

雪景色、裏日本の荒々しい海の景色など木村大作のカメラも素晴らしく、全体に色調が整った画面が、男と女のドラマを思い切り盛り上げて行く様は、今の日本映画ではなかなか見られない。やはり見事な映画でした。


「関東おんな悪名」
とにかく適当すぎるストーリーはともかく、安田道代の女渡世人シリーズの一本。監督は森一生

大阪の二つのやくざ者の抗争に、関東江島組二代目江島美樹が関わってきて、最後は派手な立ち回りでエンディング。

当時の世相が反映した物語はまさに昭和レトロ。懐かしいトラックや当時のやくざ者の立ち位置、時代の変化が汲みとれる面白さはいま見てこその価値かもしれません。

西村晃志村喬露口茂勝新太郎と、特に出なくてもというほどの豪華キャストだけ売りの映画、そんなイメージがまた映画産業のあの頃を見せてくれました。