くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「鋼の錬金術師」「探偵はBARにいる3」

kurawan2017-12-07

鋼の錬金術師
始まった途端、ただのコスプレ映画にしか見えないしょぼさ。原作の壮大なテーマが全く見えてこないのと、役者のスケールの小ささがとにかく見ていられない。さらに、映画が止まっている。映画は動いていないと意味がないが、どのシーンも止まって見えるつまらなさに参ってしまった。監督の曽利文彦は決して凡人ではないのに、どうしたのだろうという映画でした。

物語はとある国ののどかな景色の中の一軒家。優しい母親と主人公となるエドとアルの仲の良い兄弟のシーンから始まる。そして母が死に、エドとアルは禁断の錬金術で母親の再生を試みるが、失敗してアルは鎧の姿に魂を残し、エドは右手と左足を失う。

そして時はたち、エドとアルは命の再生ができるという賢者の石を求めて放浪していた。エドはその天才的な錬金術で国家公認の役職にあった。

と、原作の前提が丁寧に説明されるが、他に方法がなかったのかというほどに普通のオープニング。そして、賢者の石の謎に向かって物語は進んでいくが、シーンの至る所で、リズムが止まってしまうし、さりげない演出が素人目にも妙な場面が目立つ。

しかも、やたら空撮で広々したヨーロッパの景色が映されるが、それが返って映画を間延びさせている。

結局、手に入れた賢者の石は人間の命で生成したものとわかり、再びアルの肉体を取り戻すための旅に2人が出てエンディング。続編が作られる風なエピローグも見られるが、もう良いんじゃないかとおもう。とにかく役者陣がしょぼいから、この辺を正さないと見てられないです。原作は嫌いじゃないので、正直、がっかりな一本でした。


探偵はBARにいる3
このシリーズは古沢良太の脚本の良さもあってか、毎回しっかりとストーリーが仕上がっていて見応えがあるのですが、今回は最高の出来栄えだった気がします。ストーリーの組み立て、サスペンスの盛り上げ、人間ドラマ、どれをとってもかなりの仕上がりになっていて、全体がうまくまとまっていて、映像としても絵になっています。素直にラストは感動してしまいました。監督は今回は吉田照幸になりました。

1人の女子大生の諏訪麗子がトラックにのせてもらい雪道を走っていくと、前方に車が通行止めをしていて、トラックの運転手が近づくと撃たれて死んでしまう。助手席で震える麗子に近づいてくる犯人。それを真上からのカットで撮って場面が変わる。

例によって行きつけのバーにいる2人の男、そこにもう1人今回の依頼人で、高田の後輩の大学生が彼女が行方不明だからと依頼してきた。その彼女というのが冒頭の麗子である。探偵と高田が依頼の女子大生を探し始めると、浮かび上がってくるヤクザ同士の抗争、そして冒頭のトラックには麻薬が乗っていたらしいこと、それに関わっている1人の美しい女マリが浮かび上がってくる。その女は探偵の旧知の女で、子供をなくして自暴自棄の頃に適当なアドバイスを与えたことを思い出す。

どうやら冒頭の犯人はこの女で、自分を取り込んでいるヤクザの麻薬を手に入れ大金を手にしようとしているらしいとわかる。

なぜそこまでするのか、彼女はすでに余命いくばくも無い病気で、その自暴自棄な様子である。

そしてまんまと金を手に入れ、探偵の協力もあり取引も成功するが、金を探偵に任せて、手紙を託し、自分は警察に捕まる。探偵がマリに指示された病院に行くと、マリが生むはずだった子供と同じ生年月日の少女が入院していて、その子の手術のためのお金を作ったことがわかる。

冒頭の何気ない依頼がどんどん深みにはまるサスペンスから、金を奪うどんでん返し、そしてその裏にある真相へと転がるような見事な展開、うまいというほかない。脇のシーンの高田とヤクザの手飼いの格闘シーンや麗子の能天気なキャラクター、さらに高田のニュージーランド行きの話までよく刷り込まれた組み立ても見事。シリーズ最高の出来上がりだった気がします。