くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「仁義」「ある道化師の24時間」「海の沈黙」

kurawan2017-12-26

「仁義」
これは面白い。大人のフィルムノワール。その隅々まで嘘がないようにものすごいリアリティとスリリングな展開で最初から最後まで画面から目を離せません。これこそ傑作、監督はジャン=ピエール・メルヴィル

一人の男ボーゲルが刑事に搬送されて来て、列車に乗る。超ロングのカメラで走る列車の窓を捉えるショットが素晴らしい。カメラはアンリ・ドカ。まさに名匠の力量である。しかしこの男、巧みに隠し持っていた針で手錠を外し、隙をみて列車の外に飛び出す。

一方、間も無く仮出所を待つ一人の男コレーがいる。彼に一人の看守が、外に出たら宝石強盗をしたいと持ちかけている。

前半、ボーゲルと、出所してコレーが描かれ、たまたまレストランで休んでいるコレーの車に逃げて来たボーゲルがトランクに隠れ、それに気がつかぬふりで走り出すコレーとボーゲルの物語に進んで本編へ流れる。

この二人を中心に、元刑事で今はうらぶれた生活をする狙撃の名手ジャンセンが加わり、宝石強盗をする。このシーンのスリリングさは半端ではない。

そして、強盗は成功するが、品物の売却に手間取り、一方、ボーゲルを追う刑事の画策も一方で進んでいく。そして、換金のためやって来たコレーは、実は刑事の手が迫っていることを知ったボーゲルが駆けつけるが時すでに遅く、みんな射殺されて映画が終わる。

カメラワークや構図の素晴らしさはもちろんだが、畳みかけていく編集の妙味も見事で、とにかく隙がないほどの男のドラマとして仕上がっていく様は圧倒されてしまいます。これぞ男のドラマ、最高でした。


「ある道化師の24時間」
ジャン=ピエール・メルヴィル監督のデビュー短編作品で、サーカスの道化師の姿を追いながら、ユーモア満点のさりげない物語が描かれる。メルヴィル得意の影の演出もすでにそこかしこに見られ、のちの彼のスタイルが見られる。




「海の沈黙」
以前見たことがある一本。

1941年、フランス人のある家庭に一人のドイツ人将校が滞在することになる。ひたすら沈黙を守るフランス人の男とその姪にただ独り言のように語りかける将校の物語が描かれていく。

ある意味芸術的な語りを続ける将校だが、ナチスが行なっている非道を知るに及び、フランス人の二人に恥じる一方で、戦地に赴いていく。

最後の夜に初めてフランス人から言葉をもらい、正しいことをするように促されて映画が終わる。

アンリ・ドカの見事なカメラを堪能できる作品で、話は地味だが、見応えのある一本でした。