くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ベネシアフレニア」

「ベネシアフレニア」

もっとエグいホラー映画かと思ったら、非常に高級な普通のホラー映画だった。オープニングから前半部分の流麗なカメラワークとリズミカルなカットつなぎは一級品のレベルだし、殺戮シーンもアクロバティックな殺人鬼の描写や、工夫を凝らした惨殺シーンはオリジナリティ溢れる名シーンになっています。ただ、前半の悪=観光客、正義=殺人者たち、という構図が後半、悪=殺人集団、善=主人公たちと入れ替わる流れがそれぞれ平坦で描き分けが不十分なのが残念。でもクライマックス、死体をマリオネットのように操ってみたりする演出は拍手ものでした。監督はアレックス・デ・ラ・イグレシア

 

スペイン人のイサらが豪華観光船でベネチアにやってくる場面、いきなり出迎えたのが観光客反対の住民たちというショッキングなシーンから映画は幕を開ける。ベネチアの街、あるカップルが通りを観光している。仮装した人たちが練り歩く中、突然現れた道化師の紛争の男に写真を頼みカメラを渡す。ところがいきなり道化師はカップルの男をカメラで殴りそのままめったうちにして殺してしまう。女も建物の中に引き摺り込むが、殺戮シーンでバク転したりしてショーのような演出をするので、街頭ショーだと観光客はカメラを向けて歓迎する。

 

イサたちは空港から水上タクシーに乗るがそこにさっきの道化師が乗り込んでくる。イサの弟ホセはタクシーに乗る際落ちてずぶ濡れになる上にパスポートもスマフォも無くす。タクシーの中で悪ふざけするイサたちに道化師が絡んできて、リゴレットのオペラのチケットを配り、さらに絡んでくるのでタクシーの運転手ジャコモは道化師をブイに置き去りにする。

 

ホテルに着いて部屋で着替えた後、夜の街に繰り出したイサたちはレストランでペストの仮面の男にパーティに誘われるが断る。その後、街頭でペストの仮面の男を見かけたイサたちは後をつけて、パーティ会場に潜り込む。ところが翌朝、ホセの姿が見えない。イサたちは警察に連絡し、捜査を始める。

 

捜査を進めるが、手がかりが見つからない中、一緒にきたハビが首を切り落とされて死体で上がる。これも道化師の仕業だった。イサの婚約者アルフォンソが心配で電話をしてくるが、イサの返事が曖昧なので、ベネチアへ向かう。その頃、一緒に来たスサナが道化師に殺されかかり、ペストの仮面の男に助けられるが、そのまま拉致される。ペストの仮面の男は道化師ピエロの兄で、ウーゴという名だった。彼の息子は観光客反対を訴えていたが観光船に挟まれて死んだ過去があった。ホセも拉致されていて、ウーゴは、観光客を恐怖に陥れるために計画していた。

 

イサ、アランツァ、ジャコモたちは、ピエロが最初に招待した劇場を目指す。劇場ではピエロが待ち構えていた。そしてアランツァはピエロに襲われ、手に鉤を差し込まれ、背中に鉤を刺されて吊るされ殺されてしまう。ピエロはアランツァの死体をマリオネットのように操る。ベネチアについたアルフォンソも劇場にやってくるが、アランツァの殺戮現場を見て動けなくなる。ウーゴとピエロが双子だと判明した警察も劇場へ駆けつける。そして、ピエロを追い詰め撃ち殺す。

 

劇場の奥にホセとスサナを発見、その後、ウーゴとホテルの受付の女が手を繋いで血まみれで死んでいる現場を見つける。イサたちは、生き残ったものだけでベネチアを後にして映画は終わる。

 

異常な惨劇の映画なのだが、今一つ迫力に欠ける。イサたち観光客の行儀に悪さを前面に出す前半から、殺人鬼らが実は普通に動機があったという後半との対比が曖昧。ダリオ・アルジェントへのオマージュもちらほら見られるものの、もっとインパクトのある演出でテンポを作り出して欲しかった。前作「気狂いピエロの饗宴」より数段普通だった。でも、ホラー映画としては質は高かった。