「十字路の夜」
ジョルジュ・シムノンのメグレ警視シリーズの映画化作品。しっかり決まった構図とストーリー展開は、クオリティの高い一本でした。監督はジャン・ルノワール。
一人の女性が新車を盗まれたと喚いているところから映画が始まります。近くに住むアンデルセンとエルフという兄妹のデンマーク人が犯人だと行ってみると、ガレージの中の盗まれた新車と一人の男が殺されていた。
早速メグレ警視が捜査を開始する。そして見えてくる真相は、麻薬の密売に絡んだ犯罪組織の全貌。繋がった紐を手繰り寄せるようにクライマックスに流れていく展開が面白い。
結局、エルフという女性が首謀で、次々と男と寝ては自分の仲間に引き込んでいた。兄妹と思われていたのも実は夫婦だった。まさにフィルムノワール独特のファムファタールである。
全ての真相を明らかにして、エルフを逮捕して映画は終わるのですが、ラストの処理もなかなか粋な仕上げになっています。わずか75分の中編ですが、しっかり作られた一本でした。
「面の皮をはげ」
シンプルなギャングの抗争劇という感じの犯罪映画。ストレートに楽しむことができました。監督はレイモン・ラミ。
ある会社の会議室に映画が始まる。リュサックという男が仕切るのだが実は彼は、カジノ、クラブなど多方面に事業を展開する実業家である。しかも、官僚を始め上層部にも顔が効くのだが、かつて無政府主義の運動をしていて、「鏡」という名で呼ばれていた。
しかし、順風満帆に思われた彼の事業にライバルが現れ、ギャング同士の抗争劇に発展していく。かつての相棒の息子を弁護士に育て上げたり、妻との確執があったり、まるで「ゴッドファーザー」的なストーリーである。
抗争が激しくなり、リュサックの正体が明るみに出だすと、それまで近づいてきた官僚たちも離れていく。
そして、死んだと思われていたかつての相棒が生きていると知り、会いに行って殺してしまう。実は彼が今回の抗争の首謀でもあった。
そして、墓地での葬儀で両方のギャングが顔を合わせ、銃撃戦の末リュサックが生き残るが、「鏡」を追い続けていた警察隊がやってきて、リュサックも殺されて映画が終わる。
しっかりと演出された映像とストーリー展開は、なかなか見ごたえがありました。