「えいがのおそ松さん」
独特の絵のタッチでギャグで突っ走る作品。面白いとか面白くないとかより勢いでどんどん先に進むのですが、それぞれのポイントのギャグがかえって平坦になってしまうのはちょっと残念。監督は藤田陽一。
ニートで童貞の松野家の六子達に高校の同窓会の案内が来るところから映画が始まる。そして出かけたものの、最悪の展開で、酒に溺れて自宅で一夜が明けると高校時代に戻っていた。というより思い出の世界に放り込まれていた。
そこで、高校時代に見つけた高橋というクラスメートの女子からの一通の手紙の謎を追いながら、ギャグまたギャグの連続でストーリーが展開。そして、最後に高橋さんからきた謎の手紙の真相が描かれて映画が終わる。
普通のアニメ画面と一風変わった絵作りがたのしいし、いつもの馬鹿馬鹿しいギャグのオンパレードも楽しい。ただ、ちょっと緩急強弱が欲しかったかなと思いました。
「たちあがる女」
面白い映像作りと、ユーモアと風刺を組み合わせたストーリー展開が秀逸な一本。監督はベネディクト・エルリングソン。
主人公ハットラが弓を構えているシーンから映画が始まる。そして矢を放つと送電線をまたいで向こうへ。ハットラが繋いでいた紐を引いていくとワイヤーが付いていて、送電線はショートしてしまう。当然監視のヘリなどが飛んでくるが、巧みに逃げていくハットラ。彼女は山女という別名で警察に目をつけられていた。しかも、自転車旅行をしている若者が間違って捕まるというユーモアシーンが挿入される。彼女は近くのアルミニウム工場の無謀な環境破壊に抗議すべくこの活動をしていたのである。
ハットラは、近くで羊を放牧している男ズヴェインビヨルンに助けを求め、車で脱出する。ハットラの背後にシュールに楽団が登場する絵作りが面白い。そして無事自宅に戻り、合唱隊の指導に入る。そんな時彼女は兼ねてから申請していた養子縁組の許可がおり、一人の養女が斡旋される。
ハットラには双子の姉妹アウラがいる。政府がさらに経済活動の拡大とアルミニウム工場の推進を進めるというテレビ放映を見て、ハットラはさらに過激な行動に移る。そして送電線を倒壊させてしまう。
警察はドローンや衛星を使って山女を逮捕すべく全力をあげてくる。ハットラは必死で逃げるが、破壊活動の時に負った傷による血を途中に残してしまう。なんとかズヴェインビヨルンの助けで逃げ、海外へ脱出するべく空港へ向かうが、警察はDNA検査をして犯人を特定しようとしていた。
慌てて、引き返すがとうとう途中で警察に捕まってしまう。養子にもらう予定の女の子も諦め収監されたが、そこへやってきたのが双子のアウラ。こういう話の展開の常道で、彼女と入れ替わり、ハットラは養女を迎えに行きバスで戻ってくると、地盤が沈んで水浸しになっているズヴェインビヨルンの家のあたりが見えてくる。ハットラと幼女がバスを降りて水の中を進んで行って映画が終わる。
冒頭の弓矢のシーンから、途中ハットラが行動を起こすところになると楽団が背後に現れたり、女性3人が立っていたりとちょっとユーモアあふれた絵がほのぼの楽しい。物語は破壊活動なのに風刺と皮肉を交えたユーモアある秀作でした。
「サンセット」
疲れた。一体なんなんなのだというほど長く感じる陰気な映画でした。背後から主人公イリスを追いかける長回しのカメラワークとイリスの睨みつける顔の表情を何度も捉える映像、よくわからなく繰り返されるストーリー展開に、ぐったり疲れてしまいました。監督はネメシュ・ラースロー。
主人公レイター・イリスが帽子屋で客と間違えられるところから映画が始まる。彼女の両親がこの帽子屋を始め、今はブリルという男が後を継いで繁盛している。イリスはこの店に雇われようと思ってきたのだが、体良く追い返される。
そして安宿に泊まっていると、粗暴な男が押し入ってきて、イリスには兄がいると告げる。イリスは兄カルマンを探し始めるのが物語の本筋と思われるが、時は1913年のブダベスト。貴族に対する庶民の不満が爆発寸前になっていた。
そんな中、庶民の暴動の首謀者達の中にカルマンがいることがわかり、なんどもイリスはカルマンに会おうとするが近づけない。やがて暴動が起こり帽子屋は燃やされる。
カットが変わるとどこかの前線の塹壕の中。延々とカメラが進み行き着いたところに兵士になったかのイリスが現れてエンディング。なんなのだというラストです。
とにかくカメラワークと画面演出が陰気で暗い。物語展開も単調な繰り返しで、説明描写が全くないのでしんどいだけで終わりました。