くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「アニー・ホール」「ジャコメッティ最後の肖像」「キングス

kurawan2018-01-05

アニー・ホール
ほぼ40年ぶりでしょうか、懐かしい思いと、あまり映像を覚えていない気がして見直した。

こんな脚本は流石にウディ・アレンでないとかけないし、見事なものだと思います。ただ、機関銃のようなセリフの応酬はまさに絶頂期という感じで、必死で読んでるので、画面を見ている暇がない。終盤、ちょっとしんどいなと思ったあたりでラストシーンになるあたりの巧みさは脱帽です。

物語はニューヨークで生きるアルビーが魅力的な女性アニー・ホールと出会い、別れるまでの物語で、時間を前後させ、得意の観客への語りかけや、次々と人物を交錯させて会話をしたりを繰り返して、ものすごい勢いのセリフの応酬で描いていく。

ウィットに富んだセリフの数々を必死で追いかけていると、画面を見ている暇がなくなるほどであるが、流石にいくつかのエピソードは覚えていた。

アルビーの生意気な少年時代、ジェットコースターの下の家、奇妙な家族や知人、さらに出会ったアニーの家族の好対照な演出から、次々とめくるめくような映像展開。とにかく癖になるような画面作りは全く素晴らしい。

何もかもの物語が終わり、画面から人物が消えて、誰もいない街角のカットで暗転。これが映画のリズムだと言わんばかりの才能が見えてくる。やはり名作。


ジャコメッティ最後の肖像」
色調を抑えた上品な絵作りと、実話を映画として昇華させた物語作りはなかなかの一本で、実話とはいえちょっと映画として楽しめました。監督はスタンリー・トゥッチ

1964年、パリ、アルベルト・ジャコメッティの展覧会場から映画が始まる。
そこへゆっくりと入ってきたのがしゅじんこうロード。彼はジャコメッティの取材をしていたが、ジャコメッティにモデルを依頼される。

ほんの数時間なのでと、夕方までに終わる程度で気楽に引き受けたが、その日は完成せず翌日に。しかし、進むかと思われた肖像画の作業は進んだと思われたら元に戻され、それの繰り返しで遅々として進まなくなる。

映画はひたすら繰り返される肖像画の作業の過程に、ジャコメッティに関わってくる様々な人々とのエピソードを組み入れていき、背後に軽いタッチの音楽なども挿入してちょっとしたモダンな作品として展開していく

ジャコメッティがひたすら気に入った娼婦や妻、さらにひたすら支える弟などなどの絡みが実に面白い。

しかし、終わりが見えなくなったロードはジャコメッティの弟と考え、ジャコメッティがグレーで絵を消す前にタイミングを見て止め、そこで完成だと思わせる画策を行うことにする。そしてその計画は見事成功、仕上がったと判断したジャコメッティはそこまでを最終として肖像画は完成する。

しかし、その絵はニューヨークに送られたものの、ジャコメッティとロードは二度と会うことはなかった。ジャコメッティは会うことなく亡くなったというテロップが入る。

一人の画家の人生の最後を描いた作品としてはちょっとしたオリジナリティのある佳作というイメージの映画でした。


キングスマン ゴールデンサークル」
前作のラストが、監督の品性を疑うと酷評したシリーズの第二弾ですが、今回は傑作でした。デジタルアクションのうまさ、音楽センスの素晴らしさは、マシュー・ボーン監督の才能を堪能させる結果になりました。もちろん、人間ミンチなどのグロテスクなシーンもないわけではありませんが、それを相殺しても白眉の出来栄えでした。

オープニングからが見事。今や一人前のキングスマンとなった主人公エグジーが店を出てくると、かつてのメンバーで悪に染まったチャーリーに拉致されかける。車に乗り走りながらのアクションで映画が始まる。この導入部で一気に引き込み、チャーリーの腕が車に残ったことでキングスマンの組織がハッキングされ、ほとんどのメンバーが抹殺されてしまう。抹殺したのは麻薬を扱い謎の組織となったゴールデン・サークルを率いるポピー一味。

マーリンとエグジーが奇跡的に残ったキングスマンは、最後の作戦として見つけたウィスキーからアメリカにある同様の組織ステイツマンの存在を知り、彼らに助けを求める。そこには、死んだと思われたハリーも匿われていた。

一方のゴールデン・サークルのポピーは全世界に麻薬に混入したウイルスを蔓延させ、その解毒剤を渡すのと引き換えに麻薬の合法化をアメリカ大統領に迫る。

そしてエグジーの機転で、記憶を失っていたハリーも元に戻り、いざポピーから解毒剤を手に入れるべく行動を開始するのが本編。

あとは、見事なアクションシーンを繰り返しながらポピーの本拠地に迫るが、楽しいのは、ポピーがエルトン・ジョン本人も拉致しているという設定。このユーモアがクライマックスのアクションにも笑いを作り出してとにかく楽しい。

脇のエピソードでマーリンの死やエグジーの恋人でスウェーデン王女とのロマンスなども散りばめられて、しかも豪華キャストが集結するからとにかく贅沢な映画になっています。

ラストは当然、ハッピーエンドですが、アクションシーンと音楽のマッチングも見事で、何度も言いますがマシュー・ボーンの才能は半端じゃない気がします。とにかく最高に楽しみました。