くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ペーパー・ムーン」「嘘八百」

kurawan2018-01-09

ペーパー・ムーン
40年ぶりくらいに見直した。流石に名作とはこういうものだと納得する。しかも、テータム・オニールが可愛いし、演技が抜群にうまい。当時、人気を集めてしまったのも改めて納得しました。監督はピーター・ボグダノヴィッチ

広い墓地の一角での埋葬のシーンから映画が始まり、通りかかった一台の車から一人の男性モーゼが降りてくる。かつて関係を持った商売女の葬儀らしく、一人の少女アディが佇んでいる。この構図が実にうまい。この後、この広い大地と走り抜ける車のカットが繰り返される。

成り行きからアディを叔母さんのうちまで連れていくことになったモーゼと、頭の回転が抜群でちょっと生意気なアディのロードムービーが本編になる。

モーゼは聖書を売り歩く詐欺師で、いわゆる小悪党である。そんな頼りないところをアディはカバーしていくコミカルな展開が実に微笑ましい。そして、さりげなくアディが見せる母への想いや優しさがあちこちに見え隠れする脚本も見事で、禁酒法時代のどこか郷愁を帯びた絵作りも素晴らしく、ラストの名シーンに至ってはやはり涙ぐんでしまった。

こういう良い映画を見ると心が洗われるし、清々しくなりますね。見直して良かった。


嘘八百
とにかくがさつで騒がしい映画で、関西が舞台というのもあるが、なんとも騒々しい一本。でもそれなりに面白かったから良いとしますか。もう少しで傑作になり得たところもあるのは少し残念。監督は武正晴

古物商ながら、今ひとつ大物に巡り合わず、別れた妻との娘を預かることになった小池が車を飛ばしているシーンに始まる。そして一軒の豪邸にやってきて、出迎えた気のいい息子らしい人物に蔵を案内され、物色するも今ひとつで引き上げるが、後日また連絡がきたので行って見ると、なにやら利休が残した名品らしいものを発掘。ことば巧みに買い付けたものの、実は出迎えた男野田も、落ちぶれた陶芸家の詐欺師で、ヒュンなことから二人は手を組み、かつて苦い汁を飲まされた大物鑑定士を騙すべく計画を練るのが本編。

たまたま見た「ペーパー・ムーン」も詐欺師の話だった偶然もあって、見比べてしまった。

結局まんまと計画は成功するのですが、どこか全体が嘘くさくて薄っぺらいために、スリリングなピカレスクになりきらない。脇の配置した息子と娘たちにまんまと最後に金を取られてしまい、どんでん返しと思いきや、あまりの大金に娘たちも税関で捕まるという浅はかな脚本作りも甘い。

主人公二人が目利きの骨董屋と才能ある陶芸家にも見えないし、大物鑑定士も今ひとつ迫力にかける。要するに役者の不足がそのまま映画を薄っぺらくした感じが実にもったいない。

この手の名作といえば「スティング」があるが、流石にしっかりとした絵作りができている。この辺りに名作と凡作の差が生まれるのだろうか。