くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「となりの怪物くん」「君の名前で僕を呼んで」

kurawan2018-05-01

となりの怪物くん
脚本も演出もなかなか面白いのに、役者が全くついていっていないために、すべて滑ってしまっている、あるいはこちらに意図が伝わってこない。本当にもったいない一本。でも、コミックの実写化がうまく処理されているし、見ていてとにかく楽しい。これで、脇役がもっとしっかり個性を見せていたら面白かったのになぁ。監督は月川翔

勉強一筋、他に全く興味のない雫が、たまたま隣の席で全然登校してこない春の学校関係のプリントを届けることになるところから映画が始まる。いかにも無駄に赤いセーラー服がやや違和感なのですが、三階から飛び降りたり飛び乗ったり超人的な身体能力を見せたり、ワイヤーワークのような喧嘩シーンを繰り広げる春のファーストシーンを見ればこれも納得。

プリントを届けたものの、突然帰り道で、春に抱きつかれいつの間にか友達にされてしまう雫。なぜか喧嘩が異常に強いためにみんなに怖がられている春とペアになり、誰も近づかないのかとおもえば、いつのまにか彼らの周りに個性的なメンバーが集まりだす。この展開はかなり無理をしている。

という青春ドラマにもかかわらず、集まって来るメンバーのキャラクターが立ってこないので、主演の二人のみんなとの浮き上がり感が見えないし、プラトニックなラブから、さりげない本気ラブに移行するさりげなさも、今ひとつはっきり見えてこない。

土屋太鳳は今ひとつの大根だし、菅田将暉一人頑張ってるが、周りのテンションのズレに乗せられてしまった感じ。

春の実家は政治家一家らしく、兄優山の誕生日会にかこつけた後継者指名のパーティで春と雫は喧嘩をし、春はそのまま行方不明になる。そして月日が流れ、卒業式、春の私物を届けにいった雫は、とうとう春と再会エンドロールで二人は結婚したというエピローグで映画を閉める。

ニワトリのエピソードやマグロ船のセリフ、そのほか、あちこちに散りばめられたギャグの数々がすべて滑ってしまい、肝心の青春ラブストーリーもぼやけてしまった。もう少しキレ良く展開すればちょっとした映画になったろうに、勿体無い出来栄えでした。でもやはり光るのは浜辺美波ですね。やはり彼女を主演にするべきでした。


君の名前で僕を呼んで
非常に知的で、不思議なくらいに瑞々しい青春ストーリーという感じで、脚本がいいと嫌いなゲイの映画もこうなるものかと感動してしまいました。これで、映像作りも美しかったら完璧なんですが、そこは少し残念。監督はルカ・グァダニーノ、脚本はジェームズ・アイボリー

イタリア、1983年、大学教授の父は避暑で来ている地にオリヴァーを呼ぶ。17歳の息子エリオがオリヴァーを迎えるところから映画が始まる。イタリアらしい全体が明るい光の景色の中で、エリオとオリヴァーたちの瑞々しいほどに初々しい物語が描かれて行く。オリヴァーは24歳でエリオらと少し大人のムードを醸し出す存在感も実に素敵。

前半は、集まって来ている若い女性たちとのほのかな恋物語がさりげなく描かれていきますが、何気なくオリヴァーに惹かれて行くエリオの姿が垣間見られます。そして、エリオは一人の女性と初めての体験をし、恋か友情かはっきりしない状態の関係になる。その直後、オリヴァーはエリオに気持ちを伝え、体を合わせる。

二人の関係はエリオの両親も薄々気が付いているのだが、二人は何かにつけ愛し合うようになる。ただ、ストレートな描写はキスシーンくらいというプラトニックな演出がなかなか好感。

やがて、オリヴァーが帰る日が来るが、アメリカに帰る前の数日、エリオとミラノで暮らすように計らう。

オリヴァーが帰り、悲しみの中時が流れるエリオ。父親は彼に、素晴らしかった思い出は決して忘れてはいけないと語る。

冬が来る。オリヴァーから婚約した旨の知らせの電話が入る。一夏の美しい恋の物語を思い起こさせるように電話に出るエリオ。清らかな思い出を残しまた一つ成長するエリオの姿でエンディング。

繊細でとっても知的なセリフの数々、本当に青春映画の秀作、そんな一本でした。