くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「哀しみのトリスターナ」

kurawan2018-05-29

「哀しみのトリスターナ」
ブラウンを基調にした美しい画面作りと時の流れが、映画にリズムを生み出していく演出、そしてとにかくカトリーヌ・ドヌーブが抜群にに可愛らしいし美しい。あどけない少女から冷酷な悪女に変化していく演技力も圧巻の名作。監督はルイス・ブニュエル

両親を亡くし喪に服している17歳のトリスターナが侍女サトゥルナに付き添われて歩いてくるシーンから映画が始まる。広場でサッカーをする少年たちに遭遇するが彼らは耳が聞こえない。サトゥルナの息子も耳が聞こえていないが、トリスターナは難なく手話で話をする。

身寄りのないトリスターナは老貴族ロペの養女としてやってきたのである。ロペの姉が家の財産を管理しているためロペは貴族ながらも裕福ではない。

最初は親代わりでトリスターナを迎えたロペだが、間も無くしてトリスターナに男と女の関係を求めてくる。何もわからないままに従うトリスターナだが、次第に成長し、ある日街で、画家の卵のオラーシオと出会い恋に落ちる。当然、ロペの存在が疎ましくなってくる。養女としてやってきた日から鐘にロペの首がぶら下がる夢を見るトリスターナ。

ロペはそっけない態度を取られるトリスターナに執拗に拘束しようとするが、トリスターナはオラーシオと去ってしまう。

時が経ち、ロペの姉の死によってロペは財産を引き継ぐ。

ある時、ロペはトリスターナが街に戻っていると聞かされる。トリスターナは足に腫瘍ができ、間も無く死を迎えるのでロペのところに戻りたいと言っているらしい。ロペはトリスターナを取り戻したと歓喜する。そして、トリスターナを引き取り医者に見せるが、医者は足を切れば助かるという。そしてトリスターナの片足は切断される。

画家として成功したオラーシオは街を去り、トリスターナは司祭の勧めもあってロペと正式に結婚する。しかし初夜にもベッドをともにしないトリスターナ。

すでに老年を迎え、思うように体も動かなくなたロペはある夜、胸の苦しみからトリスターナを呼び医者に連絡するようにいうが、トリスターナは電話をしているふりをし、ロペをそのままに放置、窓を開けて雪の降る夜風を部屋に入れる。

映像はここから逆回しのように遡り冒頭のシーンまでダイジェストで戻ってエンディング。このジャンプ演出こそこの映画のメッセージなのかもしれない。

無垢な少女がやがて女として成長し、さらに打算を身につけた悪女に変身していく。前半部分の、ややエロティックな演出でトリスターナの隠れた悪女ぶりを描写し、次第にそれが表になっていく様を描いていく。サトゥルナの息子も手懐けるため,自分の裸体を見せてやる終盤のカットもすごい。

ルイス・ブニュエルの色合い満載の作品ですが、全編に漂うブルジョアへの皮肉やなんとも言えないエロスが素晴らしい作品で、バランスのいい色調と構図、カメラワークが映像としての作品に仕上げています。名作とはこういうものでしょうね。