くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「スターリンの葬送狂騒曲」「2重螺旋の恋人」

kurawan2018-08-09

スターリンの葬送狂騒曲
スターリンの死からフルシチョフが実権を取るまでのドタバタ劇をコメディ?風に描いた作品であるらしいが、コメディに対するセンスの違いか、全然笑えず、普通の映画にしか見えなかった。監督はアーマンド・イアヌッチ

映画は1953年ごろの旧ソ連、スターリーンの独裁政権下で、いわゆる恐怖政治に似た様相を帯びていた。人々は何事においてもスターリーンの言動が最優先かつビクビク反応していた。

あるコンサートの会場、突然ディレクター室にスターリンから電話、17分後にかけ直してくれという。かけてみると、今のコンサートを聴きたいから録音盤が欲しいとのこと。生演奏だったので録音してなかったスタッフは再度コンサートをやることにしバタバタする。そして仕上がった録音盤を届けようとする際、ピアニストの女性が手紙を届けて欲しいと録音盤に同封。

やがて届いた録音版に同封されていた手紙を読んだスターリンは、自分を罵倒している文面に大笑い、その直後倒れてしまう。外の守衛兵は物音がしたが入っては銃殺になると朝まで放っておく。この辺りの乾いたブラックユーモアがもっと笑えないといけないが、そういう風に演出されていないので笑えない。

やがて朝が来て、側近たちが召集される。右腕だったベリヤが何やら書類を隠蔽するのだがこの書類の最後での効果も今ひとつ物語にインパクトを与えていない。やがて側近たちも集まり中央委員会で副書記長のマレンコフが書記長となりスターリンの後釜に座り、側近にベリヤがついて影の実力者となる。

しかし、何かにつけ気に入らないフルシチョフは彼の更迭を計画、スターリンの葬儀の儀式の最中に、最高軍司令官ジェーコフと共謀し、クーデターを起こし、ベリヤを銃殺に追い込み、自ら実権を握る。ブラックユーモアながらこの辺りがまともにリアルなので、どんどん現実に引き戻されるのです。

途中に登場するスターリンの息子がやたらバカ息子だったり、中央委員会のバカぶりや、スターリンの政策をいとも簡単に覆していく側近たちの言動がブラックユーモアのテイストを生み出しているはずが、全然笑いにならず、どこか乾いた空気感だけが淡々と進む。

周辺の女性の登場人物については知識がないので全くついていけず、ソ連の歴史そのものもよくわかっていないので、途中、なんのことか混乱したものの、物語は単純なので救われた感じでした。

前宣伝ではロシアで上映中止だの話題性のある作品でしたが、思ったほどぶっ飛んでなかったという感じです。


2重螺旋の恋人
かなりグロテスクで際どい映像が散りばめられていて、サスペンスの面白さ以上にエロティックなグロさが目立った感じの作品で、個人的には受け入れがたい映画でした。確かに映像の斬新さやスタイリッシュさは評価できるもののフランソワ・オゾン監督ならもっと表現力があるだろうにと思ってしまった。

主人公のクロエが産婦人科で診察を受けているシーンの映画が始まる。いきなりの内視鏡のカットからカメラが引くと目のアップになるが、明らかにあの部分の内視鏡映像である。ここからまず度肝を抜かれる。

腹部に異常な痛みがあり検査をするも異常がないという。精神的なものかもしれないと言われ精神科医のポールを紹介される。

まず、ポールの診察を受けるクロエのシーンが冒頭に展開するが、いつかポールはクロエに恋心を持ってしまったために診療を終え、二人は恋人同士になる。ところがある時、街で女性と話しているポールを見かけ、クロエが問い詰めたが、仕事をしていたから人違いだと言われる。クロエは、女性と話していたと思われる場所に行ってみると精神科のルイと書かれていて、その名字は、たまたまポールの私物に見つけた昔のパスポートの名字と同じだった。

クロエはエヴァと名乗ってルイの病院に診察に行くが、なんとそこにはポールに瓜二つのルイという医師がいた。優しいポールと正反対の粗暴なルイの態度にいつしか惹かれていくクロエ。間も無くして、ルイはポールの双子の兄であることが知らされ、クロエはポールの恋人であることがバレていたことを知る。それでも体を合わせるクロエは、いつの間にか妊娠する。

さらにルイとポールの秘密を探る中で、ルイから、ポールのかつての恋人サンドラの存在を知る。クロエがサンドラを訪ねてみると、寝たきりになっている彼女がいた。かつて、サンドラがポールと付き合っていた時、ルイがポールのふりをしてサンドラをレイプしたため自殺未遂を起こし、今の状態になったのだという。

その時から、クロエは身の危険を感じ始め、とうとうピストルを持ち出し、ルイの診療所へ向かう。そしてピストルをルイに向けたが、なんとそこにはポールもいた。どちらがルイかわからぬままにピストルを撃ち、一人が倒れるが、同時に鏡が割れる。さらにクロエの陣痛が始まる。

そして病院で手術の結果、妊娠と思っていたのは胎児の形の腫瘍であったことがわかる。実はクロエの母がクロエを妊娠した時、体内で双子だったが体内のクロエが姉を取り込んでしまったまま生まれたことがわかる。これは流石にややグロい展開である。というか、なんで腹痛で診察を受けていた時にわからなかったの?という流れですが。

自宅に戻りクロエはポールと体を合わせるが、クロエの幻覚の姿が鏡に映り、その鏡が割れて映画が終わる。つまり、二人は一人になった解決なのか、撃ち殺したのはルイの方だったのか、それより、撃ち殺したこと自体が幻覚だったのか、物語の解釈が今ひとつ釈然としないままに終わった感じです。自宅へ向かう車の中で、クロエがポールに「兄弟が欲しかった?」と尋ねるシーンがあるので、実は双子などいなかったのかとも思える。

鏡が何度も出て来たりスプリットイメージの画面割りも多用されていて、二人いるという設定はあくまで虚構の産物ではないかという解釈もあるようにも思われ、スタイリッシュな画面が余計に謎を生んでいく。ただ、内視鏡のシーンがSEXの後の場面にもワンカット入るし、ややどぎつい演出が妙に目につくように思いました。クオリティは流石ですが、ちょっとエスカレートしすぎではないでしょうか。