くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「山中傳奇」「台北暮色」「にがい米」

「山中傳奇」(4Kリマスター全長版)

とにかく長い。延々と続く、主人公が山中を進む場面、さらにクライマックスの、法術戦の繰り返しが、延々と続くのはさすがのしんどい。パーカッションを武器にして戦うオリジナリティは面白いのに、どうもメリハリとキレがなくて疲れてしまった。でも、ワイヤーワーク、逆回しなど特撮を駆使したクライマックスは見ごたえはあります。監督はキン・フー

 

ありがたいお経の写経のため、学生僧のホーが山深い山中にある屋敷にやってくる。出迎えたのはその屋敷の主人に使えた人物。そして、現れる美しい美女やその母、侍従などなど。

 

そして一人の女と結婚する羽目になったホーだが、次々と怪しい出来事が彼の周りで起こり始める。そして、実は妻となった女こそが、悪霊であるらしいことがわかり、ラマ僧が現れ対決する。

 

さらに別の女霊が現れ、ホーと恋に落ちていく。しかしこの女も悪霊なので、ややこしいことになって、結局、ラマ僧が彼らを冥界に送ろうとするのだが、彼らの目的はホーの写経で、それを手に入れて、この世とあの世をつなぐすべを手に入れたいということらしい。

 

一旦クライマックスを迎えたかに見えたが、またぶり返して、結局、最後はハッピーエンドで落ち着くのですが、あそこまで引っ張らなくてもよかろうにという映画でした。

 

ワイヤーワークなど、のちの香港武侠映画に取り入れられるシーンの数々はこれは知識として見るべきところでしょう。

 

台北暮色」

三人の男女の生活、彼らの周辺の人々を切り取って描く作品ですが、どこか引き込まれる魅力があるのは、監督の感性ゆえでしょうか。監督はホアン・シー。

 

一人の男性フォンの車がエンコして、仕方なく電車に乗る。電車には一人の女性シューが紙箱を抱えていて、どうやら鳥が入っているらしく、これまた一人の若者リーか近づいてきて、鳥が入っていることを繰り返す。この三人、同じマンションに住む住人。映画はこの三人の周りの人々、家族、過去を巧みに絡ませながら、台湾の今を切り取った映像を展開させていく。

 

夜景のネオンが浮かぶショットや、艶やかな屋根瓦のカットなど、さりげない画面に彼らの過去などもさりげなく綴られる様は、劇的な物語はないとはいえ、身近な一瞬を感じさせてくれて、非常に親近感のわく映画になっています。

 

全体の上品さが作品のクオリティを安定させている感じがとっても素敵な一本でした。

 

「にがい米」

これは傑作でした。ストーリー構成、展開のうまさ、カメラワーク、画面の絵作り、どれも抜群にクオリティが高い。監督はジョゼッペ・デ・サンテス。

 

何百人という女性たちが北イタリアの田植え女として列車に乗り込むシーンから映画が始まる。取材のナレーションでドキュメントタッチでのこのオープニングに、ある男たちが誰かを追っている。どうやらグランドホテルの宝石強盗を追っているようで、犯人らしき男ワルテルが、情婦フランチェスカに盗んだ宝石らしきものを大切にして、田植え女に紛れて逃げろと言っている。

 

女たちの中に、一人でダンスを踊っているシルヴァーナがいる。その女とワルテルはダンスをして追ってをごまかす。やがて列車が出て、フランチェスカも乗り込むが、契約した女ではないからと言われるが、宝石の受け渡しを見たシルヴァーナは、フランチェスカに近づき、親しく話しかける。

 

やがて、田植えが始まり、契約していないから帰れと言われた一団と、契約できた女たちのといざこざから、ここに軍曹のマルコが絡んでくる。マルコはシルヴァーナと親しくなるが、フランチェスカを追ってきたワルテルとシルヴァーナを巡って諍いとなる。また、フランチェスカはワルテルにもらった宝石が偽物だと知らされる。

 

ワルテルは、備蓄し、女たちに帰りに分け与える米を盗む計画を立て、自分に気があるシルヴァーナを使うことを考える。しかし、フランチェスカもシルヴァーナも汗水垂らして仕事した女たちの報酬を不意にする計画には戸惑いがあった。

 

やがて田植えも終わり、最後にお祝いの祭りの櫓が組まれ、賑やかなひと時が訪れる。シルヴァーナはワルテルの指示通り、水門を開け、水田が水浸しになるように仕組み、人々を田んぼに引きつける。その間にワルテルたちは米をトラックで持ち出すつもりだった。フランチェスカは退役したマルコにこのことを知らせ阻止しようとする。

 

そして、農業倉庫の中で、マルコとフランチェスカはシルヴァーナとワルテルと銃撃戦になり、ワルテルもマルコも負傷する。最後にフランチェスカがシルヴァーナに、ワルテルが与えた宝石は偽物で、計画に加えて利用するだけだったと話し、シルヴァーナはワルテルを撃ち殺し、いたたまれなくなったシルヴァーナは祭りの櫓の上から身を投げて自殺する。

 

翌日、女たちは報酬の米を担いでこの地を去るが、その前に一握りの米をシルヴァーナの死体にかけてやる。こうして映画が終わる。

 

ダイナミックに動くカメラワーク、麦わら帽子が舞ったりする絵作り、サスペンスタッチで展開するストーリー、労働者と雇用主という立ち位置のメッセージなど、娯楽性のみならずしっかりと描かれた深いドラマに仕上がっているのは見事である。傑作とはこういう映画を言うのでしょうね。