くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ショックプルーフ」「裸の町」「ザ・ファブル」

「ショックプルーフ

かつてはこういう話がたくさんあったようなと思いつつもなかなか面白い映画でした。監督はダグラス・サーク

 

主人公の女性ジェニーが仮釈放され、保護観察官グリフの元にやってくるところから映画が始まる。グリフという男は実に生真面目で、ジェニーがかつての愛人で悪人のハリーに近づかないように手を替え品を替えてジェニーを監視する。

 

ジェニーは5年間待ってくれたらハリーへの愛情を捨てられず、ハリーの言われるままに会うようになるが、いつのまにか献身的に近づくグリフの気持ちを察し始める。そして規則では結婚できないジェニーとグリフは結婚することになる。

 

そんなジェニーの心を見透かすようにハリーはグリフを破滅させるべく、グリフに電話をするが、それを止めようともみ合いになったジェニーはハリーを銃で撃ってしまう。

 

グリフはジェニーが自首するのを止め、二人で逃避行することを決意しメキシコへ向かうが、取り締まりが厳しく逃げられない。さらに資金もそこをついてきて、とうとう油田で働くことになる。

 

しかし、新聞に写真も載り、常にビクビクしながらの生活に疲れたジェニーは自首を決める。一方、入院していたハリーの状態は回復の方向へ。そして自首した二人は警察に連れられ、ハリーの病室へ。そして、撃たれたのはこの人達かという警察の問いかけにハリーは違うと答え、グリフたちはその場で無罪となり映画は終わる。

 

物語の展開の速さはフィルムノワールならではで、ラストの意外性もそれはそれで見ることができる。なかなか面白い出来栄えの佳作という感じの一本でした。

 

「裸の町」

フィルムノワールの傑作の一本という有名な作品ですが、その評価通り、見事なサスペンス映画でした。物語の畳み掛けのうまさ、登場人物のキャラクターの面白さ、さりげないシーンに挿入されるユーモア、そして何と言ってもクライマックスの追っかけシーンのまるでサスペンスの教科書のような編集とカット、緊張感。圧倒されます。監督はジュールス・ダッシン。

 

暗闇の中、寝室で一人の女性が二人の男に襲われ殺されるところから映画が始まる。そして、マルドゥーン警部補のチームが捜査に乗り出す。

 

殺されたのはモデルのジーン・デクスターで、彼女と親しくしている愛人が容疑者に上がるが、彼にはアリバイがあった上に、別に婚約者もいた。しかし、調べるうちに、彼が婚約者に送った指輪などどれもが盗品であることが判明する。

 

そして、彼を緒に捜査が進むとやがて見えてくる犯人の姿がドキュメンタリータッチで展開する様が実にうまい。ナレーションを的確に入れながら、次第に真犯人に迫っていく捜査陣たち。

 

そして、ついに真犯人を追い詰めた警部たちは逃げる犯人をマンハッタン橋へと追い詰めていく。逃げる犯人、追う刑事、そのカットつなぎのうまさから、犯人が橋の上へどんどん登っていく緊張感あふれるシーンへの流れ、そして落下してしまう犯人。まさにサスペンスの教科書のようなクライマックスは見事です。

アカデミー賞撮影賞編集賞を取ったのが納得できる傑作でした。

 

ザ・ファブル

原作は知らないけれど、とにかく薄っぺらい話で、ギャグシーンも全部滑ってる演出の稚拙さが目立つものの、クライマックスのアクションシーンは一流の仕上がりになってたので、見ていて楽しかったです。監督は江口カン

 

あるヤクザ関係の集まりのところに一人の殺し屋がやってきて、次々と殺される場面から映画が始まる。そして主人公であるファブルと呼ばれる殺し屋が、ボスの命令で1年間普通の暮らしをするようになり、もう一人の殺し屋ヨウコと大阪にやってくる。こうしてお話が始まるのですが、なんともテンポが悪い。明らかに監督のセンスのなさを露呈した導入部。

 

そしてアキラという名で、大阪のヤクザ組織の世話で普通の生活を始めるが、世間知らずのアキラのやることが浮世離れしている。このエピソードが完全に滑っているし、ヨウコのキャラクターが完全に死んでいる。ここは脚本の弱さでしょうか。

 

で、素人のミサキが拉致される事件に流れる展開がテレビのサスペンスドラマレベルの流れで、あとは救出のアクションシーンへ。このアクションシーンは、海外からアクション監督を呼んだだけあって流石に面白い。結局ここだけなのですが。

 

そして、無事救出されて、元の生活に戻ってエンディング。なんの余韻もないラストには流石に雑さが見られます。まあ、今時この程度の映画がもてはやされるのですから、これで十分かなという仕上がりの映画でした。60年近く前のフィルムノワールの作品の方がよっぽど映画らしいのだから皮肉なものです。