くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「青い街の狼」「その人は遠く」「ろくでなし野郎」「密告」

「青い街(ブルータウン)の狼」

なんとも荒っぽい映画ですが、ここまで適当だと微笑ましくなってきますね。監督は古川卓巳

 

飛行機から写真を撮ろうとシャッターを押した途端爆発。このオープニングだけ思いついてあとは適当に作ったという感じのストーリーが展開していく。

 

なにやら潜入捜査をしている主人公がある組織に潜り込んで繰り広げるアクション。主人公は刑事のようだが、ヤクザと境目が見えないキャラクター演出。ヒロイン芦川いづみも無理やり登場で、訳もわからずラストシーン。

 

古き良き日本映画ですね。

 

「その人は遠く」

時代が時代とはいえ、なんともうっとうしいほどに煮え切らないラブストーリーだった。切ない話ならそれはそれで描きようがあると思うのですが、これは脚本や演出の弱さかもしれません。監督は堀池清。

 

肉親が亡くなり一人になった親戚の美しい女性に、学生時代の主人公が淡い思いを抱き続ける。一方の女性も少なからず主人公を思っているのだが、どうもお互い今一歩踏み切れない。そのもどかしい展開が延々と続く。

 

最後は女性は自立して九州に旅立ち、主人公はそれを見送りエンディング。爽やかなら使徒のはずがジメジメしただけに終わった感じです。

 

「ろくでなし野郎」

西部劇タッチで描かれる日活アクションの典型的な一本。軽い娯楽映画というテイストでした。監督は松尾昭典

 

大会社の工場建設が進む山奥の村に、一人の神父がやってくる。友人に招かれたが、実は事故で死んでいた。その謎を追いながら、新興ヤクザの利権が絡んでのアクション。たわいのない物語に、適当なお色気を交えた、映画産業全盛期の一本。

 

どこから見ても西部劇のように流れる画面と物語。気楽に楽しむ作品の典型でした。

 

「密告」

アンリ・ジョルジュ・クルーゾー監督がナチス占領下で撮った傑作フィルムノワール。これは本当に面白かった。シンプルに謎の手紙の真犯人を見つけるだけの物語なのに、どんどん終盤に向かって引き込まれていきます。

 

とある街の市民病院に勤務するジェルマン医師は、出産の往診に行き、母は助けたものの子供は死なせてしまう。しかし、これを堕胎手術だと揶揄する噂が流れる。最近、カラスと名乗る人物から中傷の手紙がばらまかれている。

 

ジェルマン医師が、精神科の老医師ヴォルゼの妻ローラと愛人関係にあるとか、恋人との仲が良くないとか、ローラの姉マリーが麻薬のモルヒネ横流ししているなどなど。

 

物語はこの謎の手紙の真犯人を追いつけるサスペンスを中心に流れていくが、次第にジェルマン医師に焦点が集まってくるクライマックスへと流れていく。

 

そして恋人がその犯人だと追い詰めたジェルマン医師だが、恋人からローラが危険だと告げられ、そこへいくと、恋人が言った通りの手紙が届いていて、やはり恋人が犯人かと思われたが、じつは精神を病んでいたローラが犯人で、彼女を病院へ送るのに夫である自分はサインするのが憚られると言われ、ジェルマン医師がサイン、直後、恋人の元に戻るが、やはりおかしいと戻ってみると、ヴォルゼ医師が自殺していた。彼こそがカラスで、妻ローラへの復讐だったと知る。

 

息子がカミソリで自殺した母がヴォルゼの部屋にいて、戸外へ消えていくシーンで映画が終わる。少々フェイクがしつこい気もするが、登場人物が見事に描き分けられている演出は素晴らしいし、傑作と呼べる一本でした。