「ガラスの墓標」
フランスフィルムノワール作品で、カラー映画である。全体の展開はフィルムノワールというよりも官能的なアクション映画という感じが強く、しかもB級映画くささが散りばめられた一本でした。正直、話がよくわからないほどに展開が雑だった気がします。監督はピエール・コラルニックです。
映画が始まると、二人組の主人公が、何やら死体が転がっている邸宅で、今、仕事を成し遂げたという風な出で立ちで登場する。
どうやら麻薬組織の金を奪ったり取り扱ったりしている相棒同士らしく、そこへ一人の女性が絡んできて、年配の男と、やたらSEXシーンを繰り広げる。さすがに、このやたらのシーンが多いので、フィルムノワールの色合いより官能映画に近くなってしまっている。
結局、彼らがターゲットにした組織の全貌もわかりづらいままに、やがて若い方が年配の方を撃って殺してしまい、愛する恋人の女が絶叫してエンディングを迎える。
正直、フィルムノワールを見たという感じがない。というか、普通の映画だった気がする。
「生き残った者の掟」
こちらもフランス映画。これという秀でたものはないがシンプルな物語の中に、男と女のドラマを描いた作品で、かなり硬派イメージがある映画でした。監督はジョゼ・ジョバンニ。
主人公カルムックが、船で、とある岬の島にやってくるところから映画が始まる。一人の女と出会い、恋に落ち、彼女を組織から連れ出したものの、彼女の過去が表になり、彼女は冒頭の島にある建物から飛び降りて死んでしまう。
と、まぁそういう話だと思うのですが、実はこちらもよく物語が把握できていない、気がする。人間関係とストーリーの構成がつかめなかったのです。
ただ、作品のテンポはちょっとしたものだったのが、先の作品と違う感じで、だからと言って、驚くほどの作品でもなかった気がします。
「殺られる」
これはなかなかの一品、ジャズを散りばめた音楽効果に、一夜のミステリアスな世界を描いていく。その切り取られた犯罪ドラマが、これこそフィルムノワールと言わしめる魅力を生み出していきます。監督はエドゥアール・モリナロ。
暗い路地、一人の男が店のシャッターを閉めていずこかへ消えていく。カットが変わると車の中にいる二人の男の後ろ姿。このジャンプカットにハッと思わせた瞬間、モダンジャズが流れてきてタイトル。このオープニングにまず引き込まれる。
タイトルが終わると、一人の女ベアトリスが階段を降りてきて、今日はダンスに行くのだという。彼女を引き止めたのが恋人のピエール。しかし、束縛されるのを嫌ったベアトリスは振り切って夜の街へ。その後を追うピエール。
さっきの不気味な車がベアトリスたちの後をつけ始める。ベアトリスはとあるビルに上がっていき、一人下で待つピエールに、車の中の一人が近づき、殴りかかる。どうやら、ピエールの存在が目につく二人の男が、彼を排除しようとしているらしい。
ベアトリスが入ったところでは、若い女性たちが、セレブのダンスパーティに向かう準備をしていた。しかし、実はそのパーティは若い女性を拉致して売り飛ばす組織だった。巧みに忍び込んだピエールは、その組織の男たちと捕まえたり捕まったりを繰り返し、最後は、警察と組織の撃ち合いをクライマックスにして、ベアトリスを救出ハッピーエンドとなる。
暗い路地、タバコの煙、モダンジャズ、など、いかにもフィルムノワールの世界観を描きながら、一夜の物語を描いていくこの作品は、本当に魅力に溢れている一品で、ちょっとした佳作の色合いを持った映画でした。なかなか面白かった。