くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「月極オトコトモダチ」「パリの家族たち」

「月極オトコトモダチ」

これが今の感覚なのだろう。妙にジメッとしているようで、結構カラッと割り切っている。そこに、動物の本能というものを封じてしまった妙な進化をした人間の姿があるように思う。面白い映画になるようで薄っぺらく、だからと言って放っておけないそんな作品でした。ただ、画面に全くこだわりがないのか素人映像にしか見えない汚さが気になって仕方なかった。監督は穐山茉由。

 

友達に無理やり連れていかれた出会いパーティで那沙はレンタル友達をしているという草太という青年に出会う。那沙はその存在を面白おかしく記事にして連載するために、レンタル友達として草太を雇う。そして始まる不思議な物語、のはずなのだが、意外にリアルに先が見えてくる。

 

那沙は珠希という音楽を作る友達と一緒に暮らしていて、ある時、病気でダウンして草太を呼んだ時、珠希と草太は知り合う。草太も音楽をしているということで意気投合していく珠希と草太を見ている那沙は、何か自分の中に沸き起こる気持ちを感じるのだが、曲の詩を那沙が書くようになって、どこか3人の連帯が生まれる。かに見えるが、那沙は草太とのレンタル契約が終わり、草太は那沙に付き合おうかと提案する。

 

と、予期できた終盤なのですが、どこかさばけた返事をする那沙のカットでエンディング。どこか煮え切らせたくない現代の人々の心のモヤモヤしたものが全編に漂う映画で、つかみどころが見えない何かがある。これが今の感覚なのだろうかと思います。ちょっとオリジナリティある映画でした。

 

「パリの家族たち」

とってもいい映画なんですが、全体のエピソードを詰め込んだ雑多感が最後まで尾を引いた感じでした。カメラワークも美しいしカット編集も巧み、フランス流のユーモアも交えているのにちょっともったいない出来栄えでした。監督はマリー=カスティーユ・マンシオン=シャール。

 

女性大統領から舞台女優まで、様々なパリで働く女性たちの姿を多方面から交錯させて描いていきます。その根底に流れるものは、母と子供の固い絆の暖かい家族の物語。母親を中心に描いているので、男性特に夫の存在は希薄に見えるのは意図したものなのでしょうか。

 

冒頭と時計台の裏側から始まる絵作りの面白さ、人物を切り替えて描く様々な母親の生き方、そして次第にその終盤に向かって母と子供の絆が見えてくる展開の暖かさがいつの間にか心に何かを訴えかけてきます。

 

決してハッピーなだけではない現実感も見せる終盤の描写も見所があるし、ユーモアで締めくくるラストもいい。決して傑作とかではないのですが映画として仕上がった一本だったと思います。