くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「きみと、波にのれたら」

「きみと、波にのれたら」

ほんの少し、ラストの畳みかけがうまくいっていたら大傑作になったろうと思うようなあと一歩が本当に残念な映画。でもアニメでしか描けないオリジナリティあふれる映像やカメラワークが本当に素晴らしい作品で、美しい画面とシンプルな画面を的確に挿入する編集のうまさも際立つ佳作でした。監督は湯浅政明

 

消防訓練をしている港のシーンから映画は幕を開け、港がかなたでサーフィンをしているひな子を見ている。彼女は自分にとってのヒーローなのだというが、このセリフが最後に生きてくる。

 

千葉に引っ越してきたひな子は、子供のころからサーフィンをしていて、とにかく波に乗るのが大好きな少女。たまたま消防士の港に道を聞いたところから知り合いになり、サーフィンを教えるうちに次第に親しくなり恋が芽生えてくる。

 

ところが、港は、たまたま一人でサーフィンをしていた時に、おぼれた青年を助けに行って死んでしまう。意気消沈したひな子だが、かつて港と口ずさんだ歌を歌うと、なんと不思議なことに水の中に港が現れるようになる。当然、ひな子以外には見えないので、港の後輩の山葵や妹の洋子が慰める日々が続く。

 

港が死んでから、まったく海に出ることができなくなったひな子だが、そんな彼女に接するうちに洋子や山葵とも仲良くなっていく。そして、ある時、ひな子は港の実家で写真を見ていて、幼いころ港が助けられた少女の写真を見つける。それはひな子だった。港がヒーローだと言っていた女の子こそ、幼い時おぼれていた自分を助けてくれたひな子だった。

 

洋子は兄の夢だったカフェをすることを引く次ぐべくカフェでバイトを始めるが、そこで、違法で花火をしてひな子のアパートを火事にした若者たちが、また新しい廃墟ビルで花火をする計画をしているのを耳にし、証拠をつかむためにそのビルにひな子と入っていく。そして案の定火事に巻き込まれ、二人逃げ遅れてしまう。

 

ひな子は、もし思い出の歌を歌えば港が助けに来てくれるが、そうしたらもう二度と会えなくなるのが怖くて歌えない。そんな彼女に、洋子や山葵の声が聞こえ、さらに港の声も聞こえてくる。そしてひな子は思い出の歌を口ずさむ。そうすると巨大な水の塊が現れ、ビルを消火していく。そして、最後にひな子に、板切れでサーフィンをして脱出するようにと港の声が聞こえる。

 

ここからのアニメ映像の独創的な発想が実に素晴らしい。ビルの上からサーフィンでお滑り降りてくるひな子の姿を、空間を駆使して描く映像演出に息をのんでしまいます。

 

そして港は無事天国に旅立つ。山葵と洋子は恋人同士になる。ひな子は港の思いを大切にするべくライフセイバーの仕事に就くことに決め、その資格を取得する。

 

映画は、ひな子が自立成長し、洋子と山葵がラブラブになったところで終わります。

 

終盤の畳みかけがややあざとく、ストーリー構成が少し無理があるように思いますが、アニメーションらしい映像がとっても素晴らしい映画でした。