くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ペトラは静かに対峙する」「トム・オブ・フィンランド」「HOT SUMMER NIGHTS ホット・サマー・ナイツ」

「ペトラは静かに対峙する」

こういう空気感の映画はたまに見かけるのですが、よほど卓越した演出を見せられないとしんどい。今回の作品は章ごとに時間を前後させて、工夫を見せるもののいまひとつ面白くなかった。人物の動きや会話の後を追うようなゆっくりとした長回しカメラのテンポは面白いのですが、全体の人物ドラマがちょっと希薄。監督はハイメ・ロサレス。

 

画家のペトラが著名な彫刻家ジャウメのもとを訪れるところから映画は始まる。しかし、実のところはジャウメが自分の父かどうか確かめるのが目的だった。ジャウメは留守で、妻が出迎える。

 

第二章から物語を始め、第三章、第一章と切り返して物語を一本の線にまとめていく。突然、家政婦が自殺するが、その前にジャウメと体を交えたり、とジャウメの冷酷な姿が描かれていく。

 

そして終盤、ジャウメの息子と恋に落ち、妊娠するペトラだが、ジャウメはペトラは実は自分の娘だと告げる。一方、息子は自殺をする。またジャウメに恨みのあった男が終盤ジャウメを撃ち殺す。

 

ジャウメの妻はペトラの娘に会いたいという。一旦は断ったペトラだが、ジャウメの死後、娘を見せにきて映画は終わる。

 

ジャウメの非道さが今ひとつわかりづらいのは、おそらく短い章の繰り返しで緊張が途切れるせいではないかと思います。時系列を組み直した構成は面白いのですが、思うように効果が出ていない気がしました。

 

「トム・オブ・フィンランド

映像のセンスがいいのか、画面が時としてハッとするほどに迫ってくるものがあるし、カット編集と音楽の組み合わせがなかなか感性がいい。ゲイの映画は嫌いなのですが、人間ドラマとしての部分がしっかりしていたためか、意外に映画として良かった気がします。監督はドメ・カルコスキ。

 

第二次大戦末期に映画が始まります。明らかにゲイたちが同胞を探している風なシーンと、空襲のサーチライトの映像のコラボの素晴らしさにまず引き込まれます。そしてテンポいい音楽に乗せたオープニングもうまい。

 

まだまだ、犯罪的とみなされていたゲイの世界で、主人公のトウコは、男を求めながら、自室に鍵をかけて男性のリアルな姿を絵にしていた。やがて終戦後、雑誌の表紙絵の仕事についたのだが、妹カイヤにも隠して男性の絵を描き続ける。

 

そんな時、かつて公園で関係を持ちかけたニパがカイヤの恋人として現れる。当然、トウコはニパに迫り、必死で欲望を抑えていたニパを解放する。

 

やがて、トウコの絵はアメリカで評判になり、トム・オブ・フィンランドペンネームでゲイたちの間で広まっていく。そしてアメリカに招かれたトウコは、自国フィンランドと全く違うアメリカの自由なゲイ社会を見る。

 

ところが、ニパは病気になっていた。次第に弱るニパ。そんな頃、アメリカではエイズの存在が知られ、その元凶としてのゲイの存在が標的にされていく。

 

トウコはこれまで隠してきた男性絵をカイヤにも公開して、堂々とゲイとしてそしてトム・オブ・フィンランドという芸術家として人々の前に出ることにして映画は終わる。

 

この手の作品のよくある、ゲイを認めよという偏ったメッセージではなく、あくまでトウコの人間ドラマを中心にした作りが映画として楽しませてくれたように思います。絵作りの感性もいいし、ちょっとした作品でした。

 

「HOT SUMMER NIGHTSホット・サマー・ナイツ」

二流の青春映画という感じの作品で、実話を基にしているようですが、いまひとつインパクトに欠けるのは役者のオーラ不足という感じでしょうか。監督はイライジャ・バイナム。

 

疾走する車、運転している少年、横から車が突っ込んんで、カットは少し遡る。父を亡くしたショックから立ち直れないダニエルは、叔母の家で夏休みを過ごすために海辺の街にやってくる。しかし、地元の人とも打ち解けず、観光客とも馴染めず浮いているところ、地元の不良ハンターと親しくなる。

 

一方この町のマドンナのマッケイラとも知り合うが、実はマッケイラはハンターの妹でハンターは彼女を溺愛していた。ハンターとダニエルは大麻を売って小金を稼いでいたが、もっと大きな取引をしようと、売人の大物と関係を持つようになる。

 

ダニエルはハンターに隠れてマッケイラと付き合い、ハンターも地元警官の娘と付き合うようになる。ダニエルはさらに金儲けしようと、一人コカインの売人と関係を持とうとするが、まんまと騙された挙句これまでのボスにも命を狙われるようになる。

 

巨大ハリケーンが迫る中、ハンターも売人に殺され、ダニエルは冒頭の事故の後、逃げ出して街を出ていく。やがて、マッケイラも町を出て行って映画は終わる。

 

ダニエルとハンターの友情話でも、ダニエルとマッケイラ、ハンターと恋人の青春ラブストーリーでもない。ハンター兄妹の過去にも何かありそうだがそこは描写せず、ダニエルのキャラクターも毒がなさすぎて役不足。結局に龍映画に仕上がった感じの作品でした。