「真実」
評判が良くないので、期待していなかったけれど、静かな雰囲気がラストで生きてくる作品でした。監督は是枝正和。
大女優ファビエンヌが自伝本を発表することになろ、脚本家で娘のリュミエールが夫のハンク、娘のシャルロットを連れてやってくる。しかし、リュミエールがその自伝本を読むとありもしない出来事や、書かれていない出来事がたくさんあり、母を非難する。しかしファビエンヌは、私は女優だからと開き直った回答をする。
ファビエンヌには新しい映画出演が決まっていて、その撮影に同行することになるリュミエールたち。ファビエンヌの姉妹のサラも女優だったがすでに他界していて、彼女へのこだわりや嫉妬もファビエンヌは苦しめられている。
物語はファビエンヌとリュミエールの母と娘のこれまでの確執を中心に、次第に祝ぎれていく過程が描かれるのですが、どこかドラマ性の緩急にキレがない。
ラスト、ファビエンヌを喜ばせるためにリュミエールは台詞としてシャルロットに喋らせる下りはどこか冷たいが、それが、本心というあたたかさと二人の不器用さを表現しているようで面白い。ここをもう少し効果的に利用すべきだったのではないかと思います。
家族が何気なくお互いの心を打ち解けあって歩いて行くエンディングは、背後の音楽とのマッチングも美しくて素敵なのですが、是枝監督ならもう一歩完成度の高いものを見たかった気がします。
「クロール 凶暴領域」
この手の際物映画でも、やはり、決めるところを決めると傑作になるのですが、この作品は、ただある程度の尺の作品にするために見せ場を無理矢理繰り返すだけで、ややコメディになってしまったのは一寸もったいない。監督はアレクサンドル・アジャ。
プールに飛び込む競泳選手で主人公のヘイリーのカットから映画は始まる。結局二位になるのだが、このオープニングの処理はなかなかいいなと思う。
続いて、更衣室で、ヘイリーの姉ベスから、巨大ハリケーンが迫っていること、父に連絡するが連絡がつかないので心配であることの電話が入る。
ヘイリーは仕方なく、父の家に向かうが、超巨大ハリケーンの猛威が迫り、みんな緊急避難していた。ようやく、父の居場所を突き止めるのだが、なんと地下にいるらしいと分かる。
水没しかけている地下に降りていくヘイリーは、突然ワニに襲われる。このワニの出方はなかなかうまいと思う。父は負傷していて、ワニから避難していた。どうやら近くのワニ園から下水道を伝ってきたらしいと分かる。
物語は、みるみる水没していく地下室から、ワニと闘いながら脱出するサバイバル劇であるが、うまくやりすごしたかと思えば、また間の抜けた行動でピンチになる。しかもワニに足や手をかぶられながらも大したケガではないようなヘイリー。一方父親は同じようになっても手をちぎられたりしているという対照的な描写。
このリアリティのなさと、次々とピンチを無理矢理作る展開に、次第に苦笑いが心の中で起こってくる。
結局、救出ヘリがやってきて映画は終わるが、あれだけたくさんのワニどうするんだろう。製作にサム・ライミが参加しているのならもうちょっと面白くしてほしかった。