くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「LORO 欲望のイタリア」「失くした体」

「LORO欲望のイタリア」

シュールな映像で駆け抜けていく映画なのですが、エロと権力が錯綜する混沌感がなかなか面白い。ただ、ちょっと長いですし、登場人物が見えづらくて、相互関係をつかみきれずに終わりました。でも面白かったです。監督はパオロ・ソレンティーノ。

 

一頭の羊のアップから映画は始まる。その羊がある大邸宅に入ると、何やらエアコンが動き出し、やがて羊はその場に死んでしまう。この邸宅は首相ベルルスコーニの邸宅らしい。カットが変わるとセクシーな美女を派遣するセルジュはこの日も権力者に美女を手配すべくヨットの上にいた。

 

権力の座を奪われたベルルスコーニは、宿敵ブローディに取って代わるべく、セルジュから美女を招き、酒池肉林の毎日を過ごしていた。そして少しづつ足場を固め、いよいよ首相任命となるが折しも大地震が起こる。

 

その復旧に力を注ぐベルルスコーニだが、妻ヴェロニカとは冷めた溝ができていた。やがて、民衆の希望を叶えるべく、崩れた教会からキリスト像が引き上げられ、人々が注目するシーンで映画は終わる。

 

冒頭の羊はベルルスコーニの失脚の表現なのか、いたるところにシュールで意味ありげなオブジェや演出が散りばめられ、所狭しと美女たちのセクシーなダンスやショットが溢れかえって、エロと俗っぽさが氾濫する映像である。下品なフェリーニという感じの一本で、これもまた映像表現と言える作品を楽しみました。

 

「失くした体」

数々の賞を手にした話題のアニメーションでこれもまたNetflix配信作品である。非常にクオリティの高い作品なのですが、いかんせん絵が暗いので、ファンタジックな話しながら、どこか陰湿だった。監督はジェレミー・クラバン。

 

どこかの研究所、切断された手首が勝手に動き始めるところから映画は始まる。目玉が落ちたり、ちょっとホラーチックなオープニング。そしてこの手首の持ち主のところへ向かい始めるが、持ち主のこれまでの人生がフラッシュバックしていく。

 

持ち主のナウフェルは、何をやっても鈍臭い青年。幼い頃、両親を交通事故で亡くし、両親の思い出を録音したカセットプレーヤーを心の頼りにしている。ピザの配達をしているナウフェルは、配達途中に車とぶつかり、そのままとあるマンションへ配達に行く。

 

配達先の女性ガブリエルとインタフォン越しに話し、ピザはぐちゃぐちゃになったので、そのままロビーでガブリエルと話を続けるナウフェル。これをきっかけに図書館に勤めるというガブリエルに興味を持つ。そして図書館に行き、そこで彼女を知り、後をつけて、彼女の叔父さんで木工職人のところに弟子入りする。

 

ナウフェルとガブリエルは次第に仲良くなり、ナウフェルは、そばにある建築途中のビルの屋上にイヌイットの住居を自分で作り、ガブリエルを招く。そして、実は自分はあの時のピザ屋だと告白するが、ガブリエルは怒って出て行ってしまう。

 

自暴自棄になったナウフェルは、酒を飲み、喧嘩をし、二日酔いのまま木工所へ行き、そこで、ハエを捕まえようとして手首を切断してしまった。

 

すっかり落ち込み、誰にも会わなくなったナウフェルに、ガブリエルは訪ねて来たが、会えず、かつての屋上の建物のところへ行ったガブリエルは、そこでナウフェルのテープレコーダーを見つける。

 

そこには、ナウフェルの両親の声に続いて、ナウフェルが、ビルのそばのクレーンに飛び移る音が残されていた。映画はここで終わる。果たしてガブリエルはナウフェルと再会したのか。ナウフェルはどうしたのか。余韻の残るラストだが、全体の色調が暗いので、ちょっと殺伐とした空気感でした。