くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「透明人間」(リー・ワネル監督版)

「透明人間」

女は怖い。これに尽きるほどのぞわっとするラストを見せられた。スタイリッシュな映像はさすがに美しく、流麗なカメラワークも恐怖を倍増させていく。しかしところどころに穴が見える脚本は意図的なものか、ミスか。その疑問を追いかけながらラストシーンを迎える映画でした。オーソドックスなホラーというよりSFの色合いが強い作品。やはりリー・ワネル監督、最後はどんでん返しでした。

 

では物語を整理してみます。ベッドで背後から抱かれながら眠る一人の女性セシリアがそっとベッドを出る。ベッドの下の何やら睡眠薬らしい薬の瓶があり、それを背後の男性に飲ませたらしい。

 

ベッドを写す室内カメラを自分のスマホで見れるように調節して、そっとこの邸宅を抜け出そうとする。海岸べりに立っている豪邸である。どうやら、彼女は夫の暴力から逃げようとしているらしく、迎えに来た妹のエミリーの車で脱出、かと思いきや男が追いかけてきて車の窓ガラスを割る。

 

何とか逃げたセシリアはエミリーの恋人で警官のジェームズの家にかくまわれる。二週間たっても怖くて外に出られないセシリアを励ますジェームス。エミリーからの知らせで夫のエイドリアンが自殺したと知らされ、ジェームズの娘のシドニーと仲良くなり、次第に普通になってくるセシリア。

 

そんなころ、謎の手紙が舞い込む。それは夫エイドリアンが自殺したので、その莫大な遺産をセシリアに託すべく、エイドリアンの弟トムから届いたものだった。こうして巨額の遺産を手に入れたセシリアは、シドニーの教育資金も手配し、ジェームズたちも幸せになるかに思われた。ところが、セシリアの周りで不気味な気配が見え隠れする。

 

セシリアは、夫エイドリアンが生きているのではないかと疑い始め、それは次第に確信に変わっていく。エイドリアンは光学研究の第一人者で、おそらく透明になることができるものを発明したのではないかと思い始める。

 

夜、外に出て白い息を吐くセシリアの背後に、何もないところから白い息が吐かれるショットが怖い。また、セシリアは脱出するときに落とした薬が洗面台においてあることから、自分は監視されていると思い始める。しかし、トムはエイドリアンの自殺した写真をセシリアやジェームズに見せる。

 

しかし、自分が送ったことのないメールがエミリーに届いたり、セシリアが殴っていないのに、殴られたようにシドニーが吹っ飛んで、ジェームズからも遠ざけられたり、さらには何かにつかまれたセシリアが投げ飛ばされるに及んで、確信したセシリアは、元の邸宅へ向かう。そこで、透明になることができるスーツが自動生成されることを発見、一着作って隠したのち脱出、エミリーに再度連絡してどうしても会いたいとレストランに呼び出す。

 

ところが二人で話していると、突然、ナイフがエミリーの首を引き裂き、セシリアは殺人容疑で逮捕され精神病院へ隔離される。そこで、セシリアは妊娠していることを知らされる。

 

トムが訪れ、このまま犯罪者となるとエイドリアンの遺産をもらう権利がなくなると脅し、その解決策として、エイドリアンとよりを戻すことを迫る。トムとエイドリアンは一蓮托生だった。トムを罵倒して、隙を作って万年筆を隠したセシリアは、自室で自殺しようと手首に突き立てる。

 

そこへ透明なエイドリアンが襲い掛かる。罠にかけたセシリアはエイドリアンに反撃、駆け付けた警備員らと半透明になったエイドリアンとの格闘が始まる。外へ追い詰めたセシリアだが、エイドリアンは、セシリアの身近な人たちを犠牲にしていくと捨て台詞を残して消えてしまう。シドニーの危険を察知したセシリアはジェームズに連絡。

 

一方シドニーが眠るベッドへ透明なエイドリアンが迫る。駆け付けたセシリアが消火器を吹きかけて姿を現した透明人間を撃ち殺すが、スーツの仮面をはがすとトムだった。

 

元の邸宅に警官が突入し、壁に閉じ込められていたエイドリアンを発見。エイドリアンも犠牲者だったと説明するジェームズに、セシリアは、すべてがエイドリアンのたくらみだと反論する。

 

エイドリアンに連絡をしたセシリアはジェームズに乗せてもらい、エイドリアンの邸宅へ。外でジェームズが待つ中、セシリアはエイドリアンの用意したディナーの席に着く。途中中座したセシリアだが、テーブルで待っているエイドリアンは、突然ナイフが首に斬りつけられ、自殺したような姿で倒れる。そこへセシリアが戻ってきて、救急車を呼び号泣。ジェームズが駆けつけたが、平然と出てきたセシリアのかばんには、透明スーツが入っていた。そして、セシリアの言葉にジェームズは「エイドリアンは自殺だ」とつぶやく。セシリアの不敵な顔のアップでエンディング。

 

なるほど、すべてはセシリアの画策だったのか。果たしてエイドリアンは本当にDⅤだったのか、エイドライアンがすべての計画をもくろんでいたのか、トムはやはり操られていたのか、最初からトムが透明人間となって襲って来たのか、最後の最後、莫大な遺産を得る権利を確定した勝ち誇るようなセシリアのカットが怖い。

 

シンメトリーで洒落たカメラと、しつこいほどに繰り返される何かがある感の脚本が面白い作品。さすがにリー・ワネルでした。