くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「レオン」(完全版)「第三夫人と髪飾り」

「レオン」(完全版)

25年ぶりくらいですね。ナタリー・ポートマン衝撃のデビュー作。やっぱり良い。何年かに一本出てくる名作ですね。細かい演出もうまいし、さりげない視線の演技が素晴らしい。さらに物語のなんとも言えない緊張感と切ないラブストーリーにオープニングからラストまで引き込まれます。見直して良かった。監督はリュック・ベッソン

 

ニューヨークを俯瞰で捉えるカメラから、ゆっくり一棟のマンションへ入っていく。一人の男レオンが、仕事の依頼を受け、手際よく殺しを行い自宅のマンションに戻ってくると、タバコを燻らせている12歳のマチルダが廊下にいる。なぜかマチルダのことに気持ちが動くレオン。

 

ある時、マチルダはレオンがいつも買う牛乳を買いに行ってやる。帰ってみれば家族全員皆殺しになっている。マチルダの父親らは麻薬をくすね、悪徳捜査官のスタン率いる麻薬取締局の悪漢たちに殺された。しかも幼い弟まで。

 

チルダは必死で平静を装ってレオンの部屋の前に行き、涙ながらに開けてくれと頼む。拒んでいたレオンも仕方なく彼女を招き入れる。マチルダはレオンの部屋でたくさんの拳銃を発見し、殺し屋なら仇を打ってほしいという。この一瞬の視線の変化が見事。また豚の鍋つかみを抱いて寝るマチルダのカットも見事。

 

やがてマチルダとレオンは行動を共にし、お互いに惹かれ始める。しかしマチルダの復讐心は消えておらず、レオンが仕事で出かけたすきに単独でスタンのオフィスに行き、かえって、スタンに捕まる。レオンはマチルダを助け出すものの、スタンはレオンを倒すべくレオンのマンションへ大勢の狙撃犯を伴って押し寄せる。

 

レオンはマチルダを逃し、自分も脱出したら一緒に暮らそうと一旦別れる。そしてまんまと脱出できたかに思われたレオンの背後にシタンの姿が。そしてレオンは撃たれ、最後の最後にスタンに股がられたまま、レオン手榴弾のスイッチを引いて爆死。

 

チルダは、学校に戻り、レオンが大切にしていた植物を庭に植えて映画は終わる。

何気ない細かな演出が所々に光るし、ゲイリー・オールドマンのヤク中の捜査官の演技も見事。そのほか何もかもが素敵にできているのが流石に名作です。本当に良かった。

 

「第三夫人と髪飾り」

これは傑作でした。いたるところに散りばめられたメッセージがラストで一気に私たちに迫って来ます。その迫力たるや憎悪に近いほどの激しさ。映像もストーリーも実に静かでシンプルなのにこの力強さはなんなんだという圧倒感にあっけにとられてしまいました。素晴らしい。監督はアッシュ・メイフェア。

 

14歳のメイは大富豪のところに嫁いでくる。しかも、すでに第一夫人第二夫人もいて、第三夫人という立場であった。映画はメイの婚礼の日に始まる。

 

その夜の初夜、ヘソの上に生卵を乗せて、それを主人がすすって行為に及ぶ儀式、そして翌朝、血に汚れたシーツを旗のように飾り、無事婚礼が終わったことを知らせる。女性にとっては屈辱に近い儀式である。

 

第一夫人には男の子がいるが第二夫人には女の子が二人いるだけ。程なくしてメイも妊娠する。メイは男の子を埋めるように祈る。一方第一夫人も妊娠するが間も無く流産してしまう。第二夫人の長女はしばらくして初潮を迎える。

 

第一夫人の一人息子は成人していて、結婚が決まっていたが、実は第二夫人と愛し合っていた。しかし、事の真相が明らかになり、息子は無理やり初対面の女と結婚することになる。しかし、初夜の儀式に及べず、新婦は立場がなくなる。

 

前後して、メイは子供を難産の末産むが女の子だった。間も無くして、息子に拒否された新婦は実家の父にも拒絶され自ら命を絶ってしまう。その葬儀、メイは赤ん坊を抱いたままどんどん後を追いかけていく。船に乗った棺は彼方に消え、メイは泣く赤ん坊にお乳をやろうと道端に座るが、お乳は飲んでくれない。

 

傍に、かつて教えられた黄色い毒草を見つける。思わず花を取り、赤ん坊の口元へ。カットが変わると第二夫人の長女は棺が流れた川のほとりで自分の長い髪をハサミで切っている。まるで女である束縛から逃れたような晴れやかな笑顔のアップで映画は終わる。メイは果たして毒草を与えたのか。女で生まれた子供に幸せはないと悟ったのか。

 

このラストシーンで、この映画の最初から描写されて来た様々なカットが、全て女性に対する過去からの視点への強烈なメッセージになってくる。実際、この家の主人のセリフはほとんどなく、夫人たちの会話で物語は展開しているのだ。本当に恐ろしいくらいのラストシーンである。こんな傑作、久しぶりに見た気がします。