くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「バルーン 奇蹟の脱出飛行」「WAVES ウェイブス」

「バルーン奇蹟の脱出飛行」

もっと面白くなるはずなのですが、脚本の弱さが露呈した作品で非常にもったいない。実話ゆえの緊迫感が弱く、ハラハラドキドキ面白いのですがもう一歩もの足りなかった。登場人物の性格や描写がくっきり浮かんでこないのが残念。監督はミヒャエル・ブリー・ヘルビヒ。

 

ブルーの風船のカットから映画が始まる。東ドイツに住むペーターの家族は2年かけてある計画を企画していた。気球に乗って西側に行くということだった。気球を設計したのはギュンターという友人。そして目当ての北風が吹くことがわかり、旅だとうとするが、大きさが足りず、ペーターの家族のみで出発する。ところが、水滴で重くなった気球は国境線まで二百メートルというところで落下。仕方なく家に戻る。

 

感情的に悲観論で夫を責めるペーターの妻の描写がなんともバカに見える。2年かけて計画したにもかかわらずこの適当な性格描写は何?という感じ。また息子が向かいの少女と付き合っているがこの息子の心の動きの描写が弱い。向かいに住む男は国家保安局のメンバーなのだが、その存在感の緊張も最初に丁寧におこなわれず、ここももったいない。しかも、落ちた気球を隠そうともせず放っておくので、当然、国家保安局に見つかることになる。

 

一時は諦めかけたが、再度気球を作ろうという息子の言葉に再挑戦をする。しかし、ギョンターに兵役が迫っていて、その期限の六週間後までに仕上げようとする。そんなペースでできるなら、なんで最初にやらないのという感じですが、実話だから仕方ないです。

 

映画は、ペーターらが必死で作る様子と、最初の気球を森で見つけた国家保安局が必死で捜査する様子とが交互の描かれていくのですが、保安局のリーダーがなんとも言えず、どこか抜けてる感がある。ペーターの妻が気球のところに落とした薬を調べるのが一番後になっていたり、車の捜査、ギュンターの子供が学校で言った一言を追求する下りもなんとも弱い。

 

ようやくターゲットが絞られた国家保安局はペーターらの家に向かうが、入れ違いに脱出したペーターらは気球を浮かばせていく。飛んだものの、国家保安局のヘリコプターが迫る。このクライマックスはもうちょっと工夫が欲しかった。

 

そして軟着陸した気球はなんとか国境を越えることに成功し大団円。国家保安局のリーダーが更迭されたかのシーンが描かれて映画は終わる。いや、このエピローグを挟むなら、もっと途中に彼らの描写に力を入れるべきだったと思う。面白かったけど、いま一歩物足りない映画でした。

 

WAVES ウェイブス」

ストーリーを語るということ、描こうとすることを伝えようとすることがわかっていないのか感性が悪いのか、なんともよくわからない映画だった。エピソードの配分が悪いのでやたらダラダラするし、独りよがりにしか見えない横長やスタンダード、フルサイズを駆使した画面の変化も意味不明な映画だった。せっかくの美しい長回しもただの技巧にしか見えなかった。監督はトレイ・エドワード・シュルツ。

 

一人の少女の自転車の後ろ姿から映画が始まり、カットが変わると主人公タイラーが乗った車の中、くるくる回るカメラワークへと移る。フロリダへ向かう彼らはしこたま遊んでいかにも青春謳歌。タイラーにはアレクシスという彼女がいて、ラブラブである。タイラーはレスリングの選手で、父も同じくだったようで期待されている。しかし肩の痛みに悩んでいた。

 

検査の結果、試合をするのは無理だと言われるが、両親に黙って試合に出たタイラーは負けた上にしばらく運動ができなくなる。タイラーの母は継母で、父親と事業をしているようである。妹のエミリーもいる。

 

そんな頃、アレクシスは、妊娠したとタイラーに打ち明ける。肩の怪我で落ち込んでイラついている中での彼女の告白に、身を入れて聞けない。アレクシスは一時は中絶を決意してタイラーとクリニックへ行くが、中絶できず、そのことでタイラーと口論して喧嘩別れしてしまう。まもなくして落ち着いたタイラーはアレクシスにメールで謝るが、アレクシスは、子供を産んで両親に援助してもらうと答え、タイラーとも終わりだと告げる。

 

自暴自棄になったタイラーは酒を飲み、ドラッグをし、友達と騒ぐ。そんな頃、ダンスパーティの日がやってくる。エミリーも友達と出かけるが、タイラーは家にいて、次第にアレクシスへの想いが高まり、酒とドラッグの力を借りてパーティ会場へ向かう。そしてアレクシスを捕まえ、話そうとするがすぐに言い争いになり、思わずタイラーは力任せにアレクシスを殴って床に叩きつけてしまう。アレクシスはそのまま死んでしまう。

 

逃げたものの、すぐに逮捕されたタイラーは裁判で無期懲役の判決を受ける。これをきっかけにタイラーの両親の間に溝が深まる。そんな時、エミリーは学校でルークという青年と知り合い、間も無く恋に落ちる。ここからエミリーの物語が延々と語られる。一体なんなのだと思うのだが、エミリーは、癌で入院しているルークの父に会いにいくことをルークに提案。そして二人の前でルークの父が死んでしまい、エミリーは自分が兄を憎んでいたことや両親の絆を取り戻すことを決意。エミリーの母もタイラーに面会に行く。

 

それぞれの家族が前向きに進み始めたという感じの映像で映画は終わるのだが、なんとも脚本がひどい。演出も独りよがりの感が強く、だらだらと長く感じる作品でした。