くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「剣の舞 我が心の旋律」「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」

「剣の舞 我が心の旋律」

ソ連の作曲家アラム・ハチャトゥリアンが八時間で書き上げたという傑作「剣の舞」誕生の前後を描く物語。ロシアならではの景色や、構図、色彩が美しい作品で、日頃目にする色合いよりも抑えた上品さがとっても綺麗ですが、内容はかなりシリアスなものでした。監督はユスプ・ラジコフ。

 

美しい田園の広がる田舎町、時は二十世紀初頭、主人公アラムの子供時代が描かれて映画は始まるが、すぐに第二次大戦下に移るので、何のための冒頭シーンか不明。時は第二次大戦下のソ連、間も無く初演を迎えるバレエ「ガイーヌ」の練習が続く。振り付け担当のニーナは連日変更を切り返し、音楽担当のアラムを困らせている。ダンサーでアラムを慕うサーシャは人知れずアラムに差し入れを届けていた。

 

そんな頃、文化省の役人プシュコフがやってきて、結末を変更した上に士気高揚のためのダンスを追加しろと命令してくる。プシュコフは何かにつけ反抗的なアラムを見張るように、徴兵免除を条件にダンサーを囲い込んだり、サーシャに迫ったりする。そんなプシュコフに思わず殴りかかったダンサーは投獄され、彼を救うためにサーシャはプシュコフに身を捧げる。

 

その現場を見たアラムは狂ったように曲を作り、それは八時間で完成されて「剣の舞」という傑作を生み出す。その踊りには体制への非難が痛烈に盛り込まれていた。

 

完成した「ガイーヌ」は世界中で公演され大成功、アラムも名声を手に入れたというドキュメンタリー映像で映画は幕を閉じる。作品としては普通の作品で、一見反体制的なメッセージを盛り込もうとする感じもあるが無難に回避した仕上がりになっている。ただ、映像がとっても美しいのでそこが見どころという感じでした。

 

「赤い闇 スターリンの冷たい大地で」

重厚で、映像も面白く、展開もスピーディなのに、いかんせん脚本のエピソードの構成バランスが悪く、雑多な話になってしまって整理ができていない感じでした。人物関係の描写も弱い上に、関連づけがちゃんとできてないので、見ている方は混乱してしまう。しかもエピソードのどれもが同じウェイトで演出されていくので、何をポイントに見るものかが全く見えなかった。いい映画なんですけどね。監督はアグニェシュカ・ホランド

 

沢山の豚が餌を食べているシーンから映画は始まる。イギリスのジャーナリストジョーンズは、チャンスを掴む才能と強引さでかつてヒトラーを取材したことがあった。時は第二次大戦前期世界大恐慌の頃である。ジョーンズはヒトラーがいずれヨーロッパを席巻し、ソ連にも迫るであろうことを上席者の前で熱く語るが誰も信じてもらえなかった。政府高官ロイド・ジョージの元で働いていた彼は折しも左遷される。しかし、世界経済がどん底の中、ソ連だけが繁栄を続けていることに疑問を持ち、単身ソ連に向かう。

 

モスクワではかつてピューリッツアー賞を受賞した記者デュランティが彼を迎える。彼は記者仲間のパーティにジョーンズを招くがそこは阿片パーティだった。何とか抜け出したジョーンズの前にエイダという一人の女性が現れる。彼はデュランティのもとで働く記者だった。

 

ジョーンズはデュランティがなぜソ連の現実に目を瞑っているかを探るために、エイダに近づく。そこで、外国の記者はモスクワから外に出ることができないと知る。しかも、ジョーンズの友人で、先にソ連で何かを調べていたポールは殺されたのである。

 

ジョーンズはソ連の関係者に巧みに取り入り、ウクライナへの汽車に乗り込み。そして、その男が油断した隙に汽車を出て、ウクライナの農村へ向かうが、そこは飢饉と飢えに苦しむ悲惨な状況だった。死体の肉を食いながら生き延びる人々の姿を見たジョーンズは、真実を知らしめるために取材を続けるが、秘密警察に捕まってしまう。しかし、余計なことは言わないことを条件にデュランティが彼を釈放させ、イギリスに送り返す。

 

ジョーンズはイギリスで、記者を前に自分の見たことを話すが結局、デュランティの手回しもあり、ソ連の状況は厳しいながらも好転しているかの記事が出る。さらに、デュランティの功績もありスターリンの外交は成功しアメリカとソ連は国交が樹立してしまう。

 

地方紙に飛ばされたジョーンズはたまたま休暇で来た新聞王ハーストに直訴し、ついに真相を紙面に乗せることに成功する。こうして物語は終わるが、ジョーンズは満州国で捕まり、30歳を前に殺されたとテロップが出る。

 

映像演出の面白いところは随所にあるのですが、とにかく脚本の弱さが映画をしんどいものにした感じです。重々しいいい内容なのですが、ちょっと残念でした。