くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「女優 原田ヒサ子」「フェリーニのアマルコルド」(4Kリマスター版)「シリアにて」

「女優 原田ヒサ子」

原田美枝子が、自らの母を捉えた短編ドキュメンタリー。認知症が進んだ母、原田ヒサ子が自らの娘原田美枝子を語り出す。

 

原田美枝子の母原田ヒサ子が普通に若い頃から映画に出ていたと語り出す。原田美枝子の娘や息子が協力するいわばホームムービー的な作品です。まあ、原田美枝子は若き日からの大ファンなので、見たという感じの一本です。

 

フェリーニのアマルコルド

約四十年ぶりの再見。全編カーニバルのような夢の世界。これこそフェリーニの魅力ですね。正直、物語というにはくっきり語っていかないのですが、真っ白なキャンパスの描かれる天才的な想像力に満ちた映像世界は本当に癖になります。

 

港町リミニで暮らす主人公ティッタ。この日、この街に綿の花が舞い散る場面から映画は始まる。まるでお伽話のようなオープニングから、ティッタが出会う街の人々、憧れのグラマラスな女性グラディスカへの憧れ、学友たちとの悪戯の日々が軽妙に描かれていく。

 

街にはファシズムの足音がそれとなく響いてくるが少年ティッタの目にはそれさえも、幻想的な架空の出来事のようでしかない。ティッタたちにとっては全てが少年時代の淡い思い出でしかない。その視点の素晴らしさに酔いしれてしまう。

 

様々な登場人物は、街の噂話が映像になる展開、精神病院にいる男性の奇行や何もかもが少年の純粋無垢な心を通して映像に転化していく。その想像世界は見事というほかありません。巨大な船が沖を通るからと町中で沖へ繰り出す。海はセットに変わり、巨大な客船が目の前に現れ消えていく。

 

母が亡くなり、雪の降る冬が訪れる。そしてやがて憧れのグラディスカの結婚シーンで映画は幕を下ろしていく。これこそフェデリコ・フェリーニの映像世界です。何度見ても癖になる素晴らしい作品ですね。

 

「シリアにて」

とにかく悲惨なほどにしんどいのと、異常なくらいの緊迫感にラストまで引っ張られてしまいました。ただ、室内空間に限ったドラマ作りと室内を縫うように動くカメラワークはなかなか良かったです。監督はフィリップ・バン・レウ。

 

外ではシリアの内戦、スナイパーに狙われた人が倒れる。そんな状況でマンションの一室をシェルターのようにして暮らすオームたちの家族と5階から降りて一緒に暮らしているハリマ夫婦の姿から映画は幕を開ける。外では爆発音が響き、スナイパーの銃弾の音が聞こえる。

 

ドアにかんぬきをかけ、必要のないとき以外は外に出ず、水も汲んできて室内で賄う。そんな姿をカメラは廊下、室内をワンカットで移動する。ハリマ夫婦は今夜ここを出ていく計画を立てている。ハリマの夫が外出したのだが、スナイパーに撃たれて倒れてしまう。その姿をオームの家の家政婦が目撃し、オームに報告。どうやってハリマに知らせるか算段する。

 

そんな中、シェルターに二人の男が押し入ってくる。違う部屋に隠れたオームたちをかばってドアの前に立つハリマは、強盗たちにレイプされるも沈黙を守りオームたちを隠し通す。そんな彼女にオームはハリマの夫が撃たれて物陰に倒れていると知らせる。

 

夜になり、オームの息子たちがハリマの夫を見にいくとまだ息があったので室内に回収、オームの夫たちの組織に連絡をして搬送してもらう。その際、明日、ここを出ていくほうが良いと言われる。

 

窓の外の状況をじっと見つめるオームの義父のアップで映画は終わる。とにかく悲惨な状況であるが、室内のみのドラマがかえって緊迫感と恐怖感を増幅させ映画をギュッと引き締めてしまう。正直しんどいドラマですが、よくできた一本だったと思います。