「ヴィタリナ」
暗い、なんでこの監督の作品は暗いのだ。しかも物語があってないような地味なストーリーなので、しんどい。たしかに画面作りはしっかりしているし、構図も素晴らしい、カットのつなぎも見事、さらに超広角レンズを利用した遠近感の作りも素晴らしいのだが、全編ほとんど室内のしかも薄暗いのは、さすがにこたえます。監督はペドロ・コスタ。
暗い路地、葬式だろうか、人々の行列が写される。突然飛行場、それも夜、一人の女性が裸足で降りてくる。彼女の名前はヴィタリナ。夫の死の知らせにやってきたが、既に三日前に葬儀は終わっていた。
夫が住んでいた部屋で、彼女は過去を語り出すというのが本編なのですが、薄暗い部屋で、かすかに顔や半身だけが浮かび上がる画面はいくら優れた構図でも長時間はしんどかった。
ただ、廊下の彼方に立つ小さく見える人物がみるみるこちらにくると大きくなるのは超広角レンズでも使っているのでしょうか。画面の隅々までピントを合わせた映像演出は、流石に賞を取るだけの仕上がりではありますが、疲れます。
結局、朝、目が覚めると屋根の上で物音がしていて、何やら屋根を修理しているシーンで映画は終わります。クオリティの高さは頷けるのですが、退屈だったというには正直な感想です。
「血」
これは流石に映像が素晴らしい。奥行きのあるカットのみならず、霧を使った人の影のシーン、格子窓を用いた画面などなんとも言えないい才能を、感じるのですが、いかんせん、それぞれのシーンとシーンをつなぐカットをほとんど使わないために、物語がつながらず大変な作品でした。ペドロ・コスタ監督の長編デビュー作。
一人の男が小型車から歩くカットの後クレジット、シーンが変わると、弟を探すヴィセントと妹を探すクララのシーンへ。ヴィセントとクララは恋人同士らしい。ヴィセントの父は病気で、治療を繰り返すも治らない。ヴィセントは父の気持ちを察して安楽死させてやるが、死体の処理に困りクララを呼び出し二人で墓地に死体を埋める。
ヴィセントは弟のニノには父を安楽死させたことを黙っているが、それがかえって弟との間に溝を作る。また、父が作った借金故に取り立ての男二人がヴィセントの周りに現れ始める。
ヴィセントの父の行方に不審を持った叔父はヴィセントを訪ねてきて、ヴィセントのいない間に弟のニノを連れ出してしまう。さらにヴィセントは借金取りに拉致されてしまう。と展開はこうして続いて行くものの、それぞれのシーンをつなぐシーンがないので唐突なカットが繰り返される。
ニノは隙を見て逃げ出し、クララと出会うが、ニノは一人何かのボートに乗り込んで何処かへ。ヴィセントも脱出しクララと出会い抱き合って、映画は終わって行く。
結局、どう結末にたどり着いたかは描かれないままに終わるのですが、フィルムノワールを思わせる画面作りはたしかに秀逸で、ペドロ・コスタの才能を感じさせる一本でした。