くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「十二単衣を着た悪魔」「ジオラマボーイ・パノラマガール」

十二単衣を着た悪魔」

低予算のどうしようもない映画かと思って見ていたのですが、弘徽殿の女御を演じた三吉彩花が中心になるにつれて映画の足元がしっかりして、最後まで物語を引っ張ってくれました。ラストは、それなりにじんわりと胸が熱くなりました。監督は黒木瞳

 

源氏物語のイベントのバイトにきた雷は、優秀な弟水に劣等感を抱き、彼女にも逃げられ、就職もできず沈んでいた。そんな彼は、ある夜、雷に撃たれたようになって気がついたら源氏物語の世界にタイムスリップしてしまう。歴史を知っている雷は陰陽師となって、弘徽殿の女御に仕えて歴史の中に生き始める。

 

物語に描かれている弘徽殿の女御とはどこか違うしっかりした女性を目の当たりにし、さらに自分と境遇の似ている春宮に惹かれた雷は、人間としての成長を遂げていく。

 

結婚し、妻が妊娠したものの、早産で死んでしまう。様々な人の流れ人生の機微を経験した雷は弘徽殿の女御の、前向きな生き様に心打たれていく。しかし、雷は突然現代に戻る。自分の生きる場所は源氏物語の世界だと、もう一度タイムスリップしようとするも叶わず、そんな彼を水を含め家族が暖かく受け入れる。

 

雷は弘徽殿の女御の生き方に倣い、一般に信じられている弘徽殿の女御の本当の姿を小説にしようとする。そんな彼の前に、源氏物語の世界で添い遂げた倫子にそっくりな女性と会って映画は終わっていく。

 

映画の作りは普通ではあるけれど、三吉彩花の熱演が映画を映画として形作るし、雷の存在も浮き上がらせた。期待はしていなかったが、思いの外、いい映画だった気がします。

 

ジオラマボーイ・パノラマガール」

こんな純愛があってもいい。リアルなようでリアルじゃなくて、平凡なようで平凡じゃない。ラブストーリーのようで青春映画のような、さりげない高校生たちの物語。もう少し、構成を研ぎ澄ましていたら傑作になりそうな予感のなんか素敵な映画でした。監督は瀬田なつき

 

高校生のハルコが、妹に起こされて学校へ飛び出していく。一方、ケンイチはいつものように自転車で学校へ。ある陸橋で二人はすれ違っているが、出会っているわけではない。ハルコは同級生のカエデたちと女子トーク。一方ケンイチは試験の途中で突然学校を辞めると教室を出ていく。帰ってみれば、看護師で気の強い姉のサカエがいる。

 

学校を辞めたケンイチは暇を持て余し、スケボーを持って渋谷でナンパし、一人の女性マユミと出会い喫茶店へ。そこでマユミの彼氏が来てコテンパンに殴られる。

 

ハルコは夕食の使いでコンビニの帰り、怪我をして倒れているケンイチと出会う。そして、お菓子などをあげて別れるが、ハルコはケンイチに一目惚れする。ケンイチが学生証を忘れていたので、それを届けに行って、ケンイチの姉サカエに誤って水をかけられ、服を乾かしているところへケンイチが帰ってくる。そして送ってもらって帰るが、サカエが渋谷でのイベントのチケットをハルコに渡し、ハルコはカエデと出かけることにする。

 

ハルコはおしゃれしてイベントへ。ケンイチとの再会を楽しみにしていたが、ケンイチはマユミを誘っていて、マユミはハルコの前でケンイチにキスをする。失恋したハルコは自暴自棄にお酒を飲み、たまたま出会った若者とはしゃいでいるうちにキスをされる。慌てて逃げるハルコ。

 

ハルコは、イベントの夜の夜更かしで母と口を聞いていないので、母の機嫌を直すために、有名なシュークリームを買いに行くが、それはすでになく、そこに来た妹とその友達と建設中のビルへ。

 

一方ケンイチはマユミと一夜を過ごし、すっかりマユミにのめり込むが、ある時訪ねていくとマユミはグアテマラに行ってしまったという。

 

ハルコの誕生日が近づいていて、カエデたちは、先日のビルでハルコの誕生会をしようとする。そしてサプライズでケンイチを連れてくるが、ケンイチはハルコを忘れていた。ショックのハルコだが、起死回生で飛び込んだケンイチ。二人を残しカエデたちは帰る。ハルコとケンイチは一夜を過ごし始発の電車へ。いつもと反対方向に乗ろうと言う。カエデたちも夜明けの街を見下ろしていた。こうして映画は終わる。

 

どうということもない不思議なセンスの作品で、透明感はあるけどリアリティはない。青春映画で純愛映画みたいですが、その方向へ突っ走るわけでもない。でも、いい感じの作品でした。