「素敵な今晩はわ」
全くお気楽な普通の作品でした。監督は野村芳太郎。
自動車教習所に勤める主人公浜村には女っ気もなく平凡な日々。そんな彼がある夜、一匹の犬を拾う。その犬を抱いて寝ると、以前街角で見かけた美しい女性由利子の夢を見るようになる。浜村は夢の世界にうつつを抜かし、現実の味気なさを嘆く日々が続く。
映画は浜村のなんとも頼りない男の姿をコミカルに描きながら、時代の移り変わりを見せていきます。でも映画としては本当に平凡な一本です。
昼も夜も会いたいと言い始める浜村に由利子は夢の世界での別れを告げる。会社も辞めた浜村は街角で由利子に会い、今度はリアルにアタックして映画は終わっていく。まあ、普通の映画でした。
「女たちの庭」
これは良かった。とにかく、香山美子、岡田茉莉子、生田悦子ら大女優の全盛期の姿が勢揃いしただけでもスクリーンを見ていて楽しくて仕方がない映画でした。監督は野村芳太郎。
年頃の娘、悠子といずみの結婚話がいつまでもまとまらずあくせくしている石塚宗一郎、綾子夫婦の物語、そして九州にいる宗一郎の友人真山が癌で亡くなるという流れから、それに並行して、悠子の結婚相手にと考えた加川という青年に絡んでの悠子、いずみの三角関係などが絶妙に展開され描いていく脚本が実にうまい。
そして、そんな展開の中で綾子の苦悩が次第にその真実を語り始める。実はいずみは綾子と真山の子供であるらしいという空気から、いずみが九州へ確かめにいき、そこで真山の妹の真山紀子と出会い、本当はいずみの妹である亡き真山の娘みふゆとの出会い、物語は石塚夫婦の過去の物語へと遡っていく。
そして、何もかもが心の中で知ることとなり、加川がインドネシアに旅立つのを悠子といずみが見送って映画は終わっていく。悠子の友人康子の登場などもスパイスとなり物語が実にしっかりしているし、役者それぞれが地に足のついた演技をしているので、物語がうわついてこない。これこそ映画全盛期の日本映画の底力だろう。決して傑作とか名作ではないが、こういうレベルの作品が普通にあった時代の一本という感じでした。