くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「あの波の果てまで」(前篇、後篇、完結篇)

「あの波の果てまで」(前篇 後篇 完結篇)千

大ヒットテレビドラマの映画版で岩下志麻を一躍スターにした映画です。まあ、典型的なすれ違いメロドラマという感じで、離れたと思えばまた元の鞘に収まりまた波乱の出来事が起こってはなんとか解決する。これというのもない普通の映画ですね。監督は八木美津雄。

 

東京にいた主人公の千秋が賢島の実家に戻ってくる所から映画は幕をあけます。たまたまバスを降りたところで佐竹という青年と知り合います。賢島で真珠の養殖を行う父庄三は、新興の養殖業者の妨害で危機に瀕していて、なんとか金の工面をするべく奔走していた。千秋は実家の苦境を知り、仕事をするべく東京に行くことにする。そんな彼女に研究所の佐竹という男性を紹介される。やがて千秋は佐竹を恋するようになりますが、一方で佐竹を執拗に追いかける蘭子が、行く先々で佐竹に縋ってきます。

 

実は千秋の実母はかつて水産研究所にいた女性で、千秋を捨てて北海道に行っていた。千秋は実母美奈子を訪ねて北海道に行くが美奈子の態度は冷たかった。

 

一方佐竹も東京から北海道の研究所へ移った。しかし、佐竹はまた東京に戻りさらに沖縄へと旅立っていきます。追いついては再会しては別れるを繰り返す千秋と佐竹。千秋には池尻という一人の青年も近づいてきます。とにかく千秋が美しいので、父庄三がピンチになるたんびに資金を提供してくる男が出てくるけれど、皆千秋が目当てという典型的なドラマが何度も繰り返す。そしてどうしようもなくなった千秋は池尻との結婚を決意するが、自分を許せない千秋は自殺未遂をします。そこから助かって、佐竹と再会して、前篇は終わります。不幸を受け入れようとする主人公、果たせぬ恋に悩む主人公、まさにメロドラマの王道ですね。

 

さて、不幸な女の恋物語の後篇は、池尻と千秋の結婚シーンから始まる。曖昧な返事をしていた千秋の言葉から池尻はどんどん結婚の話を進めてしまい、庄三への池尻の援助のこともあり断りきれず結婚式となった。しかし、池尻は勤め先のチャームスクールの社長と愛人関係があり、その社長の執拗な絡みに辟易としていた。そして、池尻はチャームスクールを辞め、起業する決意をする。

 

池尻と千秋は普通の新婚生活を始めるが、池尻は何かにつけて千秋と佐竹のことが気がかりだった。千秋の周りの友人たちも千秋の境遇を鑑み、何かにつけて助けようとする。佐竹は千秋にきっぱり別れを告げて、実家の九州へ旅立つ。

 

そんな頃、池尻の仕事のパートナーの黒岩が会社の金を持ち逃げし、池尻は窮地に陥る。さらに賢島で庄三も死んでしまう。自暴自棄になった池尻は千秋に当たり散らし、千秋は家を出る決心をする。そして佐竹を追って九州へ行く。佐竹と再会した千秋はこのままうまく行くかと思われたが、東京から弁護士が来る。池尻が黒岩をナイフで刺したのだという。弁護士は池尻のために千秋に戻ってほしいと懇願、困った千秋は佐竹に会い相談するが、佐竹はお互いなんのわだかまりもなく幸せになる日まで待つことにして、千秋を送り出す。こうして後篇は終わります。本当に二転三転していきますね。

 

いよいよ完結篇、次から次と二人の仲を裂こうとする人物が出ては消えの連続で展開していく。池尻の裁判は、千秋の証言で好転、さらに黒岩をかつて使っていたという宮原産業の社長などが突然現れて、有利な展開をし、池尻は執行猶予となる。しかし千秋への想いはかげることなく、千秋と佐竹の行く末は厳しくなる。

 

宮原は千秋とその母を自分の経営する旅館で使うことにする。そんな千秋に執拗に迫る池尻。詐欺を働いた黒岩は何故か無罪放免で宮原の経営するクラブのマネージャーになる。そんな頃、佐竹に女川から観測船に乗る話が舞い込んでくる。一方池尻は離婚を承知せず、千秋にナイフで迫ったりし、自暴自棄になっていく。宮原も千秋に迫ったりするというなんとも言えないエピソードが出てくる。しかし、千秋の実母の説得でようやく離婚を承諾する。

 

その頃、佐竹は女川から船に乗る予定になる。佐竹を追って千秋も女川に向かう。しかしここでも邪魔するキャラクターが登場して、千秋は佐竹に会えない。ところが急遽燃料補給で青森に寄港するという連絡が入り、千秋は青森へ向かうが、なんと台風が直撃して佐竹の乗った船は難破してしまう。

 

千秋は浜辺で途方に暮れる。さらに、佐竹が波に呑み込まれたという情報も聞いて、千秋は汽車に飛び込もうと考えるが駆けつけた美奈子に助けられる。悲嘆に暮れる千秋の前に船の船長が瀕死の重傷でやってきて佐竹は無事だと知らせる。そして船で浜に来た佐竹と千秋はようやく抱き合ってハッピーエンド。

 

宮原や、下宿に女やら、出ては消えていくおじゃまキャラがなんとも微笑ましい上に、しまいには台風って、本当に笑わざるを得ない。しかも無理やりハッピーエンド。これぞ古き良き日本映画ですね。微笑ましくなってしまいました。