くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「あのこは貴族」

「あのこは貴族」

これは良かった。演出とはこういう風にするものというお手本のように隅々まで行き渡った手抜きにない映像作りにまず驚かされるが、それにプラスして役者の使い方が実に上手い。さらに映像のリズム感も見事な感性で綴られていくから、物語が薄っぺらくなってこない。たわいのないストーリーがキラキラとさりげなく輝いてくる様にうっとりしてしまいました。監督は岨手由貴子。

 

2016年元旦に物語が始まる。タクシーの中から東京の夜の街を捉えていく映像と、切り替わってタイトル。タクシーに乗っているのはこれから親族の食事会に向かう主人公華子。実はこの日、華子は婚約者を連れていく予定だった。しかし、このタイミングで彼氏と別れ、食事会にやってくる。華子の姉らは、早速見合いを勧め、華子もそれに応じる。

 

このあと、ハイテンポで何人かの男性を紹介されて見合いをする場面が続く。そして、辟易としてきた頃、一人の男性、イケメンで弁護士をしている青木幸一郎と出会う。まさに奇跡と感じた華子は一気に幸一郎を好きになってしまう。友達の逸子に相談すると、どうやら名家の息子らしいとわかる。逸子は華子の友達の中で、華子同様独身のままで、バイオリニストだった。華子の家も開業医なのだが格はずっと上だった。ある時、幸一郎の携帯に一人の女性から届いたメールを見てしまう。やがて、幸一郎は華子にプロポーズする。

 

カットが変わり2017年故郷の富山に時岡美紀が帰ってくる。東京に住んでいた美紀は久しぶりに故郷に戻り高校の同窓会などに出る。かつて、慶應義塾大学に入学した彼女は平田里英という友達ができた。二人とも大学受験で入学した外組だったが、学内には内組という、高校から上がってきたいわゆるセレブ集団がいた。授業で美紀は一人の男性幸一郎からノートを貸してくれと頼まれる。やがて、父の体調が悪くなった美紀はなんとかキャパクラでバイトをしながら授業料を払うが、限界が来て大学を辞めてしまった。そして高校の同窓会で久しぶりに里英と再会する。

 

カットがが変わり、イベント会場で仕事をする美紀。彼女は幸一郎に誘われて手伝いに来ていた。舞台では逸子がバイオリンを演奏していた。そこで幸一郎を見かけ、さらに幸一郎のそばに美紀という女性が親しげにいるのを目撃する。そして美紀から名刺をもらうさい、美紀は幸一郎の名刺の裏に自分の連絡先を書いて逸子に渡す。

 

逸子は美紀を呼び出し、華子と会わせる。それは責めたりするのではなく、お互いに知るためだった。美紀はキャバクラにいた頃に幸一郎と再会し、遊び友達レベルで付き合っていた。美紀は幸一郎に富山土産をせんべつにして別れを告げる。そして東京で起業しようとしている里英に誘われる。

 

やがて幸一郎と華子は結婚するが、いかにもハイソな幸一郎の家庭に圧倒されながらもそつなく付き合っていく華子。やがて幸一郎が政界に出ることがわかりかけ、華子は次第に何かしらの疑問を感じ始める。そんな時、道で颯爽と自転車に乗る美紀を見かけた華子は声をかけて、美紀の部屋に行く。そこには雑多ながらも落ち着いた佇まいがあった。

 

家に帰った華子は疲れている幸一郎と二言三言言葉を交わす。そして、華子は離婚を決意し、幸一郎の家に家族総出で謝りに行く。一年の時が経つ。華子は逸子のマネージャーのような仕事をしていた。美紀は里英と新しい会社の仕事を精力的にこなしていた。

 

華子はたまたま逸子の演奏会の企画で出かけた先で、選挙区内を回る幸一郎と再会する。逸子のバイオリンの映像の中、幸一郎と華子は目を合わせる。こうして映画は終わっていきます。

 

全く、あまりに素敵であまりにそつがなくあまりにさりげない中に、現実のリアリティが見事に映し出されている。一見、ありえないような設定。古臭い設定のようで、現実には存在するのだというのを誰もが目を瞑っているのを見事に映像化した感じの素晴らしい逸品でした。