「ガンズ・アキンボ」
ハイスピードなカメラワークと細かいカットの切り返しとスローモーションを組み合わせた編集でテンポよく展開するスピード感は面白いのですが、なんとも悪趣味でグロとスプラッターが入り混じったZ級アクション映画という仕上がりでした。まあ、面白かったと言えば面白かったけど中身は全くなかった。監督はジェイソン・レイ・ハウデン。
世の中に、殺し合いをネットに流して楽しむスキズムなる輩たちが横行している近未来?携帯ゲームのプログラマーのマイルズは日頃の鬱憤をネット掲示板やSNSに投稿して気を紛らせていた。たまたまスキズムにも攻撃的な投稿をし、突然スキズムの闇組織のメンバーが乱入し、マイルズを気絶させて両手に拳銃を固定してしまう。スキズムのリーダーリクターは最強の殺し屋ニックスを二十四時間以内に殺せば解放すると約束する。
物語は両手に拳銃を固定されたマイルズが、ニックスからのメチャクチャな攻撃に逃げ惑いながらも反撃していく姿を描く。一方、リクターは警察とも繋がっていたり、ニックスは幼い頃逆恨みでリクターに殺された警官の妻の一人娘だったりと無理やりの人物背景も描かれて、なんとか深みのあるドラマにもしようとしているが、結局、やたらめったらの撃ち合いシーンばかりである。
リクターはマイルズの恋人ノヴァを拉致し、マイルズをけしかけるが、マイルズはニックスと協力しリクターの組織に殴り込んでいってクライマックスとなる。そして、ニックスは自らを犠牲にしてリクターの部下を倒し、マイルズはノヴァを人質にしたリクターをやっつけて映画は終わる。瀕死のマイルズは何故か命は助かり、世界に広まったスキズムを根絶すべく戦いを続けるというエンディング。
まあ、何にも中身もない、派手な銃撃戦のみの映画でしたが、退屈はしなかったので許しましょう。
「ステージ・マザー」
いいお話やし、映画の空気感もいいのに、本当に残念。ストーリーテリングの組み立てが悪い。曲もいいし、ラストの盛り上げもいいのに、余計なシーンが多すぎて本当にもったいなかった。監督はトム・フィッツジェラルド。
ゲイバーのステージシーンから映画は幕を開ける。舞台で歌っているのは誰もが口パクである。一人の女性?リッキーがステージに立ってそのまま倒れてしまう。カットはテキサス、リッキーの実家。母のメイベリンは息子が亡くなったという知らせを聞き、葬儀に向かうことにする。メイベリン夫婦はリッキーがゲイであることにずっと反対してきたため会っていなかった。メイベリンの夫は葬儀に行かないというので一人メイベリンは向かう。ところが、葬儀の場で、次々ゲイの人たちが歌い出したのでたまらなくなり出てくる。
メイベリンは、リッキーのパートナーだったネイサンから、リッキーが残したゲイバーの権利がメイベリンにあると知り店に行くが、経営が傾いていた。最年長のダンサーもやめ、ますます厳しくなった店を見るにつけ、メイベリンは、口パクを辞めて生で歌わせることにし、自ら営業にまわって、観光客を取り込もうとする。営業先のホテルでたまたまコンシェルジュ長の年配の紳士と知り合う。
やがて店は再度盛り上がり、ダンサーたちの様々なドラマもメイベリンの登場で解決していくが、夫が迎えにきたことをきっかけにテキサスに帰ることにする。そして店をネイサンに譲って、辞めた年長のダンサーに演出を譲り、メイベリンはテキサスに帰ってくるが、リッキーをどうしても許せない夫を見るにつけ、メイベリンは再び店に戻る。そして、コンシェルジュ長とも再会し、リッキーの映像が流れる中、メンバー全員が大熱唱して映画は終わる。
ラストの熱唱シーンが素敵で、映画を見事に締め括るのですが、終盤、一旦テキサスに戻るシーンが必要なのか疑問です。このシーンが妙に時間伸ばしに見える。中盤のダンサーたちのドラマをもう少し力を入れればもっと深い作品に仕上がった気がします。勿体無い映画でした。