くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「まともじゃないのは君も一緒」「NO CALL NO LIFE」

「まともじゃないのは君も一緒」

コメディとシリアスのバランスが抜群によくできたとっても楽しいラブストーリーでした。成田凌と清原果耶の機関銃トークも最高で、どこか甘酸っぱい青春が垣間見られる上に、全体が透き通っているのが良い。ちょっとした佳作という出来栄えの映画でした。監督は前田弘二。

 

女子高生のガールズトークから映画は幕を開けます。同じ学校の女子生徒君島の恋愛噂話で盛り上がる友達を冷ややかに見つめる香住の後ろ姿からカメラはゆっくり全体を捉えていきます。香住は、子供の教育論で人気の宮本という実業家に憧れ、大ファンだった。そんな香住はこの日もマンツーマンで教えてくれる予備校で、数学バカで普通が理解できない大野と向かい合って、有る事無い事を言い合っている。ふとしたことから、大野に普通を教えることになった香住は、大野に宮本のフィアンセになったらしい美奈子を練習台にして女性との接し方を教えようと考える。

 

実は香住の本心は、憧れの宮本と美奈子の仲を裂くという目的もあった。しかし、大野は美奈子と妙に気があってしまう。そんな大野に戸惑う香住は、君島の母が営むバーで管を巻く。一方、香住は以前講演会場で宮本に渡したファンレターから宮本に誘われる。

 

大野と美奈子が食事の帰りのデートを追っていた香住は、宮本に誘われて入ったラブホテルから巧みに大野を誘導しラブホテルの前で美奈子と宮本を鉢合わせさせる。美奈子は宮本の本性を知ってその勢いで大野に、宮本と別れると公言してその場を去る。ところが美奈子からなんの連絡も来ない大野は香住に相談するが、それが普通だと香住は答える。

 

そして宮本の公演会場に出向いた香住と大野はお互いに、それぞれ思いを寄せる相手に心の丈を打ち明け、気持ちよく去っていく。大野と香住はまた二人になる。香住は大野が以前美奈子に話していた森の音を聞きたいと誘い二人で近くの里山に行く。そこで香住は大野に告白する。伝わったのか伝わらないのかわからないような会話の後二人は森の奥に歩いて行って おしまい の文字が出て映画は終わる。

 

スマホを使って香住が美奈子と大野の様子を聞きながら香住の心になぜか嫉妬心が芽生えてくるところがとにかく切ないし、そんなこととは知らずにしゃあしゃあと美奈子とのデートの様子を話す大野の姿も微笑ましいほどにピュア。大野と香住の機関銃のようなトークの連続の合間に次第に二人の心が通じていく様の展開もとっても素敵。よくできたラブストーリーの秀作という感じの楽しい作品でした。

 

「NO CALL NO LIFE」

なんとも暗い映画だった。その上、原作を十分に理解したうえで脚本が描かれていないので、それぞれのエピソードがその場限りになってその連続でやたら長く感じる。しかも、前半がやたら長く、本来の後半部分の話とのバランスが実に悪い。その上、演出センスがないのか、全然リズムに乗ってこない。良いお話になるはずが、ど素人の凡作に仕上がった感じでした。もう一つ言うと主演の優希美青が大人っぽすぎて女子高生に見えないし、脇役を適当に配置したので、ガタガタのクライマックスになるし、散々な仕上がりでした。監督は井樫彩。

 

女子高生の有海は、時々入ってくる謎の留守番メッセージを調べるべく、従兄の佐倉を待っている場面から映画は始まる。佐倉がそのメッセージから住所を探し出し、そのアパートに行ってみると誰もいない。近くの埠頭で時間を潰していた有海は、金髪に染めた春川という高校生と出会う。彼は佐倉の後輩だった。

 

同じ学校の春川はそれから有海に近づいてきて次第に親しくなる。有海は実は従兄弟の佐倉が好きだったが友達も好きで、その友達に取られたようになる。春川と有海は次第に付き合うようになるが、素行不良の春川に近づくなと有海の友達に忠告される。しかし、佐倉が有海の友達と親しくしているのを見て、有海は半分自暴自棄になって春川のマンションで過ごすようになる。そこは春川の母の愛人が買ったものだった。

 

そんな頃、有海にかかってくる留守電メッセージに折り返してかけてみると、しばらくして子供の頃の春川につながる。春川の母の愛人は時に春川に暴力を奮っていた。さらに、有海の幼い日にもつながる。有海は、父に性的虐待を受けていたのだ。この辺りまでの物語がやたら長い上に、留守電のエピソードが次第にどうでもよくなる後半と色がバラバラで、取り留めなくなってくる。

 

ある時、春川が学校で喫煙しているのが見つかり退学することになる。出ていく春川に駆けつけた有海は、たまたま春川が、カッターで有海の髪の毛の紐を切ってやろうとし、その弾みで頬に傷をつけ、駆けつけた教師の暴言にきれた春川は教師を刺してしまう。そしてそのまま春川は逃亡、有海も後を追う。髪の毛を切るくだりもなんで唐突にという感じです。

 

春川は一軒のアパートに行く。そこは、かつて有海が佐倉と行ったアパートだった。そこは春川が幼い日に過ごした部屋だった。春川は、匿ってくれる知り合いを紹介してもらえる先輩を頼り、一方で母親に100万を無心して、逃亡することを計画する。そんな春川についていくと答える有海。そして二人は体を合わせるが、すでに裸で雑魚寝しているシーンが中盤にあるのでこのシーンが全く生きてこない。

 

春川は母親に会いにいくが、母は春川にナイフを突き立てる。一方、アパートには警察が来て有海が捕まる。なんとか振り切った有海は春川の元へ行くが、そこには陸橋で息絶えた春川がいた。この終盤も、やたら適当な警察の描写、空間も時間もめちゃくちゃな展開、なんとも言えない雑な演出に見ていられなかった。ホリプロ60周年作品らしいが、あまりにひどくて、唖然としてしまいました。