くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「ラストナイト・イン・ソーホー」

「ラストナイト・イン・ソーホー」

これは面白かったが、少々、描きたいものを詰め込みすぎたきらいがないわけでもない。でも、音楽センスが抜群にいいし、オープニングから引き込む演出テンポの良さは一級品。単なるタイムトラベルホラーと捉えるとこの映画の真の面白さを掴み損ねるのと、そうとっていくと映画としての出来栄えはランクが下がってしまう。あくまで、不安の塊で大都会に飛び出した一人の女性の成長の物語なので、そこを見ていくと、ある意味では相当な傑作かと思えます。見事でした。監督はエドガー・ライト

 

スクエアの光の中に主人公エロイーズのシルエットが浮かび上がりいきなり踊り出す。バックに流れる曲は1960年代ポップス、ハイテンポなオープニングにまず引き込まれます。イギリスの田舎に住むエロイーズはロンドンのファッション専門学校を目指している。母は彼女が7歳の時に自殺して祖母と二人暮らしである。そんなエロイーズにデザイン学校の合格通知が届く。孫の旅立ちを祝福する一方でロンドンは恐ろしい街だからと心配する祖母だが、エロイーズは亡き母に夢を叶えるためにロンドンへ向かう。

 

ロンドンのソーホーに着いたエロイーズは、早速学校の寮に入るが、いかにも自分中心なジャカスタとルームメイトとなりしかも着いた早々夜の街に連れ出されたり、ある夜はジャカスタが平気で自分達の部屋に男を連れ込んだりでうんざりして来る。そこで、一人暮らしをするためにアパートを見つける。そこはかつての繁華街だったが今は寂れていて一人の老婦人が大家をしていた。そのレトロ感が気に入ったエロイーズはそのアパートに住むようになる。

 

ところが、その部屋で好きな‘60年代のレコードをかけ眠りにつくと、夢の中で金髪でセクシーなサンディという歌手志望の女性と出会う。サンディにみるみる惹かれていくエロイーズは夢の中でサンディを追いかけるようになる。時に鏡にエロイーズが映ったり、サンディと入れ替わったりのテクニカルな演出が面白い。エロイーズはサンディが着ていた’60年の衣装を学校でもデザインに取り入れるようになり、先生たちの評判も上がっていく。

 

一方の夢の中のサンディはジャックという切れ物の男と知り合い、彼の紹介で小さな店に勤めるようになり夢の実現へ一歩踏み出したかに見える。ところが、サンディの舞台を見ていたエロイーズは、そのセクシーすぎる姿に、この店がいかがわしい売春宿のような店で、ジャックはサンディを娼婦として働かせることが目的だったとわかる。しかし、歌手の夢実現のため死ぬ思いでジャックの言いなりに仕事をするサンディだが、次第にエロイーズはサンディを助けようと動くあまり現実と夢が混同してくる。

 

エロイーズは、学校でもジョンという黒人青年と知り合い恋に落ちる。二人の仲はどんどん深まっていくが、エロイーズはサンディを親身に考えるあまり、時に夢の中にもエロイーズが出現するようになり、一方で現実の中にサンディを抱いた男たちの亡霊が見え始め、次第に夢と現実が入り乱れ、精神的に追いつめられていく。

 

そんなある時、ジョンを部屋に呼んで愛し合おうとした途端、サンディが鏡に映り殺される姿を目撃してしまう。殺したのはジャックだと判断したエロイーズは警察に知らせる一方で、自分でも過去の新聞を調べ始める。次第に現実の中で幻影を見ていくエロイーズのそばにはソーホーへ来た時から謎の老人が出没し、てっきりジャックの晩年の姿だと信じて、殺人の証拠を探していく。ようやく二人きりで老人の言葉を録音したエロイーズだが直後、老人は交通事故に遭い、エロイーズのバイトしているパブのママが彼は風紀担当の刑事だと話す。彼はジャックではなかった。

 

サンディは、殺されたのではなく、彼女を抱いた男たちを次々と殺していたのが真相だった。サンディの本名はアレクサンドラと言った。何もかも嫌になったエロイーズは田舎に帰る決心をし、大家の老婦人のところにその旨を伝えるが、老婦人こそがアレクサンドラの今の姿だった。そして、嗅ぎ回っているエロイーズの口封じをしようとする。ジョンが飛び込んでくるがアレクサンドラに返り討ちにされ刺される。その騒ぎの中で、火事になる。アレクサンドラは夢を壊され、悲惨な人生を送った過去を悔いながら火の中に包まれていく。

 

やがて、デザイン学校の発表会、エロイーズがデザインした‘60年代風の服は大歓迎される。鏡にはサンディがエロイーズを励ます姿が映って映画は幕を閉じる。

 

とにかく映像センス、音楽センスが秀一な一本で、しかも、主演のエロイーズを演じたトーマシン・マッケンジーもサンディを演じたアニヤ・テイラー=ジョイも最高にキュートで可愛いので、映画がとっても素敵に見えます。いい映画だった。