くらのすけの映画日記

「シネマラムール」の管理人くらのすけの映画鑑賞日記です。 なるべく、見た直後の印象を書き込んでいるのでネタバレがある場合があります。その点ご了解ください。

映画感想「5月の花嫁学校」「デカローグ7」「デカローグ8」

「5月の花嫁学校」

スケールの小さなメッセージを描くためにああでもないこうでもないとエピソードを重ねてダラダラとしてしまった感じの映画でした。絵作りの面白さは買いますが全体にテンポが実に悪いのと、センスがないのか一つの映像にまとめあげることがうまくいっていない。90分くらいで締めたら良くなったかもしれない映画でした。監督はマルタン・プロポ。

 

窓を開ける、髪の毛をビシッと揃えるといういかにも規律正しいと言わんばかりの映像から映画は幕を開けます。この日、ヴァン・デル・ベック家政学校の新入生を迎える日だった。ポーレット、ジルベルト、マリー=テレーズらは颯爽と新入生の前に現れる。時は1967年、田舎に立ついわゆる花嫁学校である。今から考えるといかにも古臭い規律を延々と説明するポーレット。理事長で夫のロベールは経営には全く興味がなく、若い生徒を見て楽しむすけべ親父である。

 

物語は、何かにつけ古臭い規律で縛ろうとするポーレットたちに対しての生徒たちの反抗がある意味コミカルに描かれていく。ある時、ロベールが喉に食べ物を詰まらせて急死、学校の資料を調べていたポーレットたちは、すでに破産に近い財政状態であることを知る。早速ポーレットと義妹のジルベールは、債権者の銀行へ行くが、そこでポーレットは元彼のアンドレと再会する。一気に燃え上がる二人の恋。もう展開は支離滅裂になる。

 

そんなこととは知らないジルベルトは、アンドレに一目惚れしてしまう。学内では生徒たちの中で恋人と密会する子や、レズビアンの関係になる二人などのエピソードが挿入される。

 

そんなドタバタの中、学校はパリでの博覧会に出る話が持ち上がる。全員がバスに乗る時になり、ジルベルトはポーレットがアンドレと会っているところを目撃、失恋したジルベルトは吹っ切れて華麗に変身する。ポーレットたちも、古臭い考え方に良い加減うんざりしていたのだ。時は1968年、パリでは5月革命が勃発していた。

 

バスに乗ってパリに向かった生徒たちだが、途中で前に進めなくなり、ポーレットら全員バスを降りて颯爽と田舎町をパリへ突き進むことに。突然踊り出し、ポーレットが途端に自由を叫び始め、生徒たちもそれに賛同してミュージカルシーンのように行進していって映画は終わる。

 

やりたいことはわかるのだが、コネ回しただけのエピソードの羅列のテンポが実に悪く、思い切って三分の二くらいに再編集したら面白い映画になったかもしれない一本でした。

 

「デカローグ7 ある告白に関する物語」

これもまた良かった。紋切り型で終わるエンディングに、映像で綴ってきた何十倍ものメッセージを投げかけてくる余韻に圧倒されます。力のある監督の演出とはこれだと言わんばかりでした。監督はクシシュトフ・キェシロフスキ

 

公営住宅でしょうか、子供の鳴き声を背景にカメラが建物を捕らえます。一室に灯りが灯っていて、中に一人の少女がうなされている。若い女の人があやそうと来ますがもう一人の年配の女性が抱き上げてあやします。カットが変わり学校の事務局にさっきの少女マイカが出国の申請をしている。子供の分はまた取りにくるからと帰る。

 

子供演劇を見ている年配の女性エヴァとその横に少女アンカ。舞台上の役者たちとの交流でアンカは舞台へ上がる。一方袖からマイカがアンカを呼ぶ。実はマイカは16歳の時に子供を産んだ。その子がアンカだが、当時校長をしていた彼女の母エヴァがその子供を取り上げ育てていた。すでに6年が経っていた。マイカはそんな母から子供を取り戻すべく計画し実行に移した。

 

イカはアンカを連れて父親である男性の家を訪ねる。当時、その父親は国語の先生で、エヴァは説き伏せて娘と別れさせ子供を自分の子供として届けたのだ。マイカはアンカを自分の子として変更させるべくエヴァに連絡をするがエヴァは了承しなかった。マイカはアンカを連れて男の部屋を後にして遠くへ逃げるべく出て行く。マイカはアンカに自分が本当の母親だと何度も話すがアンカは理解できない。眠るとうなされるアンカにマイカはヒステリックに対応してしまう。

 

男はエヴァに連絡をし、エヴァは夫とマイカを探しに出る。男もマイカを探しに出るが見つからない。マイカは駅に行くが次の列車は2時間後だという。事情を察した駅員の女性はとりあえず駅舎で休むようにいう。そこへエヴァが訪ねてくる。駅員は適当な返事をするが、目を覚ましたアンカを見つけてしまう。

 

やがて列車が到着する。マイカはアンカを残して列車に飛び乗る。エヴァに抱かれていたアンカはエヴァを振り解き列車を追いかけ、さって行く列車をじっと見つめる。アンカはマイカのことを理解したのかもしれない。本当の母が去って行くのを察知したのかもしれない。そんなアンカをじっと見つめるエヴァ夫婦のカットで映画は終わる。

 

最後まで結論は見えないのですが、ラストシーンに全てが凝縮された気がします。見応えのある映画でした。

 

「デカローグ8 ある過去に関する物語」

少し入り込みにくいドラマでしたが、無駄のない画面作りで物語を描いて行く展開はこれもまた見事です。監督はクシシュトフ・キェシロフスキ

 

大学教授のソフィアがジョギングをしている場面から映画が始まる。この日、大学に行った彼女は、アメリカから来たエルジュビェタという女性を紹介される。彼女も聴講生としてソフィアの授業に出たいというので参加させる。その授業の中で学生の発言にエルジュビェタも意見を出してくる中で、ある少女の1943年の出来事を引用してきた。それはソフィアの話でもあった。

 

ワルシャワで、幼い少女だったユダヤ人のエルジュビェタは、匿われていた家族から次の家族へ移るのに後見人とある家族を訪ねた。ところが、断られてしまう。なんとか後見人の知り合いの家族に匿われ、2年を過ごして無事生き延びたのだ。

 

ソフィアはその時連れて行かれた建物にエルジュビェタを連れて行くが、今は別の人が住んでいる。仕立て屋をしているあの時の人物の場所を教えて、エルジュビェタは訪ねるが、その男は話題を逸らせて話すことはなかった。エルジュビェタが帰った先を扉の影から見つける男は、外にいるソフィアを認める。この男のカットで映画は終わって行く。

 

少女時代のエルジュビェタが、匿われるのを拒否される話が宗教的な部分を絡めた理由とゲシュタポに絡めたの理由とが交錯し、一瞬理解しないまま最後まで見たので、ちょっと話が見えなかったのが残念。でも、それほどワンカットも逃せない作りになっているのはさすがという感じでした。